第15話
親父がコンビニに向かっている間、俺は看護婦から話を聞かされていた。
親父が入院したのは、一ヶ月ほど前。
ずっと、息子に会いたい、と口にしていたらしい。
俺はその話を聞いて、複雑な気持ちになった。
「何で、今更そんな事言ってんだ…… 弁当も意味分かんねーし」
「金魚掬さん、息子さんに酷いことをしたって言ってたわ。 その事、ずっと気にしてたんだと思う」
……酷いこと?
度合いが違う。
俺は、下手したら殺されてたかも知れない。
今更優しくされた所で……
「毎日、会いたいって。 神様にちゃんと願いが通じたのかも」
「ふざけんよ……」
やりようのない怒りが沸いてくる。
神様?
俺を虐待してたヤツの願いを神様が聞いただって?
看護婦のセリフを聞けば聞くほど、俺の中で反発する言葉が渦巻く。
だが、それが上辺のセリフでしかないことに、気がついた。
(……違う)
こんなセリフは本心じゃない。
俺は心の奥じゃ、親父と和解したいと思ってたんだ。
ずっと会わなかったのは、ただの意地だ。
親父だって同じに違いない。
親父は、本当は、俺に優しくしたかったんじゃないか?
下らない見栄で、後に引けなくなっちまったんだ。
本心で息子を虐待したい奴なんて、いない。
(格好つけてんじゃねーよ、クソ親父)
本当の所は分からない。
ただ、目の前の弁当を見て、そんな気がした。
何故か大量のペットボトルを持って、俺は病室を後にした。
結局、親父の口から謝罪の言葉は無かったが、この土産が答えなのかも知れない。
家に帰ると、おっさんの姿が無かった。
冷蔵庫にペットボトルをしまっていると、扉に何か付箋がしてあることに気がついた。
「何だよ、コレ」
付箋には、こう書かれていた。
「ロケットが完成した。 打ち上げにお前を連れてくことは出来ない。 達者でな。 星矢☆」
「はあっ!?」
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