第14話
俺は電車を乗り継いで、駅から徒歩5分の、「都内ノ大学病院」にやって来た。
受付に向かい、金魚掬カイトの名前を出す。
「ご家族様でいらっしゃいますか?」
「……はい」
「でしたら、こちらの病棟の3012号室にいらっしゃいますので」
「ありがとうございます」
俺は、そのままエレベーターに乗り込み、3階のボタンを押した。
エレベーターが動き、チン、と音がすると、扉が開く。
病院の廊下には、見舞いに来た家族やら、点滴を腕に付けて歩いている老人なんかがいる。
俺は、そいつらの顔をチラチラと確認しながら歩いた。
(……親父は、寝たきりだったよな)
何故か、心臓の鼓動が早い。
ビビッてんのか、俺は……
でも、昨日、俺はハレナ組のヤツらを倒した。
病気を患ってる親父なんて、今更怖くない。
廊下をまっすぐ進み、3012号室の前までやって来ると、深呼吸した。
今日、ここに来た理由は、親父の弱ってる姿を見て笑ってやる為だ。
俺は、病室へと足を踏み入れた。
「……」
広い一室に、カーテンで仕切りがしてある。
この中に、親父がいるらしい。
一つずつ開けていく。
「あっ、すいません……」
全然違うじいちゃんのベッド。
赤面していると、看護婦が気づいて声をかけてきた。
「どちらの面会ですか?」
「あっ、親父です…… 名前は、金魚掬カイト……」
すると、看護婦ははっとした顔つきになった。
そして、ちょっと待ってて、と言い、慌てた様子で右端のベッドの奴に声を掛けた。
「金魚掬さんっ、息子さんですよっ」
「……おお」
俺は、親父のいるカーテンの内側へと入った。
「……」
親父は、管の繋がったマスクを口に当てて、寝たきりだった。
家を出て10年弱。
親父の姿は変わり果てていた。
(……)
俺が絶句していると、突然、マスクを外して親父が立ち上がった。
「ダメですよ、金魚掬さん!」
「ノラオ、ちょっと待ってろ…… ゴフッ、ゴフッ、」
そう言って、親父は病室から出て行った。
しばらくして戻って来ると、手にはビニールの袋。
コンビニで何か買ってきたらしい。
「腹、減ったろ」
何故か、コンビニの弁当を親父は買ってきた。
「……あんま、腹減ってねーよ」
「……」
妙に悲しい顔をされた為、仕方なく食う。
「うまいか?」
「……ああ」
すると、親父はまた立ち上がって、どこかへと向かった。
「ノラオ、ちょっと待ってろ」
「んだよ、今度は」
しばらくして、今度はペットボトルのドリンクを大量に買って戻ってきた。
「何だよ、こんな飲めねーよ」
「違うのが良かったか?」
……そういう意味じゃねーよ。
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