第11話
(くっそ、行き止まりかよっ)
逃げた先は行き止まり。
デブが迫ってくる。
やるしかない。
俺は、シノを片手に突進した。
しかし、簡単に受け止められると、みぞおちにグーパンをもらう。
「うっ、ぐうっ」
膝をつき、シノを手から離す。
更に、足蹴で仰向けに倒されると、馬乗りになって殴りつけてくる。
「おら、死ねっ、てめぇっ」
「があっ、ぐっ、ぐうっ」
意識が遠のいていく。
そういえば、こんなの前にもあったっけか……
俺が子供の頃、親父が悪ふざけで俺の上に馬乗りになった。
「わあっ、やめろぉっ、苦しい、苦しいっ」
「お父さん、やめてっ」
悪ふざけがエスカレートして、親父は俺のことを本気で殴りつけてくる。
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」
俺は、必死で叫んだ。
その頃の俺に、歯向かう力は無かった。
ただひたすら、ごめんなさいと口にする以外ない。
翌朝、俺の顔が倍以上膨れ上がっているのを見て、母親は青ざめていた。
こんなことがあったせいで、俺は学校に行けない日が続いた。
ある日、俺は勇気を出して、先生に言った。
「俺、家で虐待されてるんです」
若い女の先生だった。
先生は、こんなことを言った。
「……分かったわ。 明日、話聞きに行ってみるから」
翌日、先生が俺の家に来た。
親父と母親、先生が居間で話をしている。
すると、親父が立ち上がって先生を殴りつけた。
「何も分かってない若造の分際でっ、しゃしゃり出て来るなっ」
母親の悲鳴。
先生は、意識不明で病院へと担ぎ込まれた。
それからすぐに、先生は学校を辞めた。
結局、周りの大人は頼りにならず、俺は父親の暴力に耐えきれず、逃げ出した。
俺は、ずっとこうやって生きていくのか?
相手が悪くても、力で押さえつけられて、こっちが悪者にされちまう。
やりたいことが見つかっても、力の強いヤツに押さえつけられて、行きたくない方にどんどん追いやられていく。
強いヤツが甘い汁を吸って、辛い思いをするのはいつも俺だ。
「こいつほんと腹立つわぁ…… 土下座して謝罪されても腹の虫収まりそうにねぇ。 売っちまうか」
「いんじゃないすか。 あれ?」
「……」
意識を繋ぎ止めて、俺は立ち上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます