第6話

「どうだ、星は好きか?」




 おっさんに言われて、俺は頷いた。




「……嫌いじゃねーな」




「良かった。 なら、気が合いそうだ」




 しばらく星を眺めた後、寒くなった為、車内に戻る。


おっさんがエンジンを回すと、俺は聞いた。




「おっさんって、どこに住んでんだ?」




「おっさん呼びはやめろ、茶都星矢だ」




 ちゃんとせーや?


すっげー変な名前。




「セイヤさん、でいいのかよ」




「それなら悪くねぇな。 お前は?」




「……金魚掬ノラオ」




「キンギョスクイ? また妙ちくりんな名前だな」




 いやいや、お前に言われたくねぇし。




「俺は埼玉にある安アパートに戻るが、おめぇはどこまで送ってけばいい?」




「……」




 俺は、黙り込んだ。


なんせ、戻るべき居場所なんかない。


大体、夜は川沿いの橋の下とかで時間をつぶして、冷え込んだ明け方はコンビニで凌ぐ。


昼間、やっと暖かくなったら、アパートの屋根に移動してうたた寝したり、そんな感じだ。




「帰る場所がねぇのか」




「……」




 おっさんはどーすっか、と腕を組んだが、仕方ねぇな、と呟いた。




「おめぇを捨ててくのもアレだ。 ウチに来いよ」




「……!」




 マジか……


おっさんが飼い主になってくれんなら、ありがてぇ。


俺は、しばらくおっさんの家に転がり込むことになった。
















 おっさんの家は、家賃3万の六畳一間の簡素なアパートだった。


道中、布団が無いからと、ホームセンターで毛布を購入。


ちなみに値段は980円。




「付けといてやるよ」




 そんなの今日のバイト代だろ、と思わなくもなかったが、下手な事言ったら家賃までせびられそうだから黙っておいた。


 その日から俺らは共同生活をすることになった。


生きる目的の見つけ方を俺はおっさんに質問したが、最初の目的はすぐに見つかった。


金を貯めてこの家を出て行くこと、だ。


なんせ、このおっさん、いびきがハンパなくうるさい。




「ンゴ、ゴゴゴ……」




 地響きみたいないびきを真横で聞かされて、俺は目が覚めた。


毎晩、工事現場じゃたまらねーよ。


翌朝、寝ぼけ眼で起きてくると、おっさんも目を覚ました。




「くっあ、よく寝たぜ」




「……」




 ちっ、と舌打ちしそうになったが、気分を変えて顔を洗う。


タオルで濡れた顔を拭うと、俺は質問した。




「今日も広場行くのか?」




「……いや」

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