第4話
「今はまだ飛ばない」
自称ロケットの外壁は金属と金属を雑につなぎ合わせたようになっていて、とても大気圏突入に耐えられる代物とは思えない。
中を案内してもらう。
「ここがエンジンだ」
しかし、その空間には何も無く、床面にエンジン、とチョークで書かれているのみ。
鉄の梯子をよじ登り、2階へと向かう。
「ここが、コックピット」
「せっめぇ……」
天井は1.5メートルも無い。
腰を落とさないと頭がぶつかっちまうし、横幅もあり得ない位狭い。
まるで、押し入れだ。
「なあ、子供が押し入れで宇宙船ごっこやってんのと大差無くねーか?」
「子供の遊びじゃない。 見ろ」
おっさんが指差したのは、スイッチ。
壁にスイッチが取り付けられている。
「押したらどーなんだよ……」
「さあ、どうなるかな」
まさか、空に飛び上がるとか、ねーよな?
こんなクソボロいロケットが上空何千メートルまで飛んだら、100パーバラバラになる。
「や、やめろ」
「スイッチ、オン!」
ビビって地面に腹ばいになる。
すると、ピカピカと部屋の中の豆電球が付いた。
「な……」
「はっはっ、すげぇだろ? 車から電気を引っ張って来てんだ」
……飛ぶんじゃねーのかよっ!
でもまあ、エンジンを積んでない時点で、それはねーか。
豆電球はロケットの外にもくくりつけられている。
青やら赤が目に眩しい。
「やっけに明るいな、この豆電球」
「こいつはLEDだよ」
「……どっちでもいいけどさ、飯は?」
すっかり周りは暗い。
しかも、吹きすさぶ風がやたら寒い。
「さみーから、車ん中で食うか」
車ん中?
弁当でも買ってあるんなら、中々気が利くな。
車内に入り、エンジンをかける。
暖房を付けて全開にすると、ゴオオーッ、という音と共に、暖かい風が送られる。
「ほら、食え」
白いレジ袋から、おっさんがパンを取り出して俺に渡した。
夕飯って、またパンかよ!
「またコッペパンじゃねーかっ」
「嫌なら食わなきゃいい」
「……」
食うけどさ。
粒あんとマーガリンのコッペパンをちぎって口に運ぶ。
俺は質問した。
「つか、何でロケットなんて作ってんだよ」
「……」
おっさんは、パンを口に突っ込みながら、言った。
「ゆべ、ばんばよ」
……何て?
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