第2話

おっさんに連れられてやって来たのは、道端にある立ち食いそば屋だ。


暖簾をくぐって中に入ると、サラリーマン風の連中がズルズルそばを貪っている。




「ガフッ、ウベェ!」




「ゾゾゾ、ゾゾゾ……」




 ったく、品の無い食い方だ。


俺なら、絶対音は立てない。


路上育ちでも、それ位のプライドはある。




「かけそば、2つ」




 おっさんが注文したのは、かけそば。


おいおい、かき揚げ食いてーんだが。


サクサクのかき揚げ食いてーんだが。


しかし、無常にもかけそばが目の前に置かれる。




「……」




 俺は冷え切った目でおっさんを一瞥する。




「ゾゾゾ、フーッ、フーッ、ゾゾゾ」




 こいつもまあ、良く音を立てやがる。


俺は、割り箸を割って茶色いつゆにつけると、手本を見せるかのごとく、麺を口に運んだ。




「ウギャアアアーーッ」




 俺は、自分が猫舌なのを忘れていた。


叫び声を上げると同時に、箸を投げ出す。


その際、腕が器に当たって地面に落ちる。


ガシャン、と割れて、汁が店内に飛び散る。


みんなが、俺に注目する。




「大丈夫ですか?」




 店員のおばちゃんが駆けつけて来た。




「なんだおめぇ、猫舌なのかよ。 おばちゃん、悪ぃんだけど、ざる蕎麦にしてやってくれねーか」  




 ……くそっ。
















 慣れないもんを食ったおかげで、恥をかいたが、そばを完食して腹が満たされた為か、俺の気分は良かった。




「よーし、そば食ったんだから、付き合ってもらうかな」




「……は?」




 俺がねぐらに帰ろうとすると、おっさんがそんな言葉を口にした。




「手伝う?」




「そば食ったんだから、文句は言わせねぇよ」




「っざけんな」




 何だか分からねーけど、そば一杯でこき使われてたまるか!


俺がその場からダッシュしようとすると、おっさんが声を張った。




「夕飯も出るぞー」




 走っていた俺は、ピタ、と動きを止めた。


聞き捨てならないセリフ。


夕飯も出す、だって?


そのままバックでおっさんの元に戻ると、何事も無かったかのごとく、聞いた。




「……で、何をやりゃいいんだ?」




「ついてこい」
















 今度は、コインパーキングにやって来た。


そこに、1台の軽トラが止めてある。


おっさんがキーを差して回すと、隣に座るよう指示。


言われたまま、助手席に乗り込む。




「今からパーツを回収しに行く」




「パーツ?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る