第四百七十二話 三姉妹の絆編 その二十


 その後数時間くらい同じ場所を周り続けるが、やはり何も見つかる事はなかった。

 

「無理そうだな……」

「そうですね……」

 

 思い出すものも無ければ、手がかりもない。

 両親らしき人物も現れていない。

 

「やるとは言ったけど、これかなり無理ゲーだな……」

 

 記憶喪失の程度によっては、こいつに断片すら記憶が残っていねえ可能性があるし……。

 

「お医者さんに診てもらうのはどうでしょう?」

「私に病院代まで要求すんなよ……」

 

 こんな時、もし外科治療ならあの変態に頼むんだがな……。

 

「もう良いや。今日は帰ろう」

「そうですね……」

「明日こそ見つけるぞ」

「頑張ります」

 

「――!」

 

 突然、私と心美は落雷を喰らいそうになる。

 

「な、なんだ?」

 

 空を見る。

 雨は愚か、自然に落雷が降りそうな雰囲気など皆無。

 いるのは……一体のロボット。

 

「スタ子……に似てるな……」

 

 外見こそ違うが、装備などが酷似している。

 まるで恋が同じ感じのを作ったみたいに。

 いや……同じ感じではない。多分作ったのだろう。

 何が目的か知らないが……。

 

「浅井初、その隣の少女をそちらに渡してもらう」

 

 私が正体を問う前に、敵が私に要求する。

 

「お前を作ったのは恋だろ? 何で恋にこいつが必要なんだ?」

「そちらに語る言葉は持たない。良いから黙って渡すんだ」

「悪いけど、今は恋の悪ふざけに付き合ってる暇はねえんだ。よそ当たれよそ」

 

 恋の性格的にどうせいつもの下らない悪ふざけだろう。

 なら構う事はない。いつも通り適当に。

 

「!」

 

 ロボットの眼が瞬き、私に向かって光が放たれる。

 

「おわあっ!」

 

 私は何とか叫びながら、心美を庇いつつ回避する。

 

「冗談にしてはやり過ぎじゃねえの?」

「先から言っている。その少女を渡せ」

「断る。こいつは私の友達だ」

「初さん……」

「あくまで……渡す気は無いのだな?」

 

 背中からビームサーベル的な何かを取り出す敵。

 対して私は丸腰……。

 

「待て……吾の家族に手を出すとは何奴だ?」

 

 背後から芝居がかった喋り方が聞こえる。

 

「ふっ……この吾が相手してやろう」

 

 そいつは木刀を構えて、戦闘態勢に入っていた。

 

※※※

 

「江代!」

「ふっ……エルウィンド!」

 

 風魔法が江代の木刀の機械から放たれ、ロボットの装甲を少し切り裂く。

 

「アレは博士の……ボルガノン!」

 

 サーベルを取ろうとした手を銃型に変え、巨大な炎魔法が放たれる。

 私に放たれたそれを、江代は咄嗟に前に出て風のシールドを展開し防ぐ。

 

「ふっ……我が魔法の前では造作もないな。大人しく消えるが良い」

 

 炎魔法を無力化した江代は木刀を構えなおす。

 機械から風と氷の気が放出され、木刀を包むように展開される。

 

「冷風乱舞!」

 

 叫びつつ、江代はロボット目掛けて飛び上がる。

 風属性と氷属性、両方の属性の剣撃が九度相手に叩きつけられた。

 

「トドメだ!」

 

 その声と同時に放たれた最後の攻撃は、激しい光と共に放つ突き。

 核と思しき部分が貫かれ、脱力するかのようにロボットの機能が停止する。

 

「勝負あったな……」

 

 江代がキメ顔で木刀を一度振るう。

 

「何とか勝ったみたいだな……心美」

「あ……あぁ……」

 

 何故か心美は冷や汗をかきながら喘いでいる。

 そのままゆっくりと目を閉じて……心美は気絶した。

 

「う……」

「心美……心美!」

 

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