第四百六十五話 三姉妹の絆編 その十三


「初さん、あれは?」

「ん?」

 

 指差された方向にあるのはゲーセン。

 二章であのリア充と戦ったのもあそこだ。

 

「あいつどうしてるかな」

 

 今はそんな事どうでも良いか。

 

「あいつ?」

「何でもねえ。てかお前ゲーセンも知らねえんだな」

「そうですね……記憶を失う前は知っていたかもですけど」

 

 にしても世間知らずが過ぎるような気もするが。

 

「記憶喪失の種類にもよるよな」

 

 漫画やアニメの記憶喪失にもいくつか種類がある。

 学んだ事や知識が無くなる記憶喪失や、思い出を忘れる記憶喪失とか。

 こいつの場合多分思い出が無くなったんだろうけど……。

 

「にしても知識いくつか飛んでんじゃねえかってくらいだな」

「?」

「いや……まあ気にするな。別に今すぐ思い出さなきゃいけねえわけじゃねえし」

「わ、分かりました」

「で、行ってみるか?」

「はい!」

 

 私はそのまま先頭に立って、心美と共に歩く。

 

※※※

 

「おー!」

 

 心美の反応は、街を見た時と変わらず。

 

「初めてアニメイトに行った時の私達だな」

「ふっ……」

 

 アレは酷かった思い出がある。

 別に買い物の内容は酷くない。だが、アキバ店を出た後にカツアゲをしていた姉さんがいた事が酷かった。

 

「あいつがはしゃぐ度に酷い思い出が蘇るのなんなんだろな」

「さあな」

 

 最終章だからって本編にないことまで思い出す必要あるか?

 多分読者は感動しねえぞ。

 

「むしろ赤の他人が聞いたらそのまま引くと思うな」

「独りで何を言っておる?」

「そこはお前も会話に参加して欲しかったぞ江代」

 

 というかお前だけが頼りだったぞ。

 

「さてさて、何をやるつもりなんだろうか」

 

「見つけましたわ!」

 

 あーあ……一番会いたくねえ奴が来たよ。

 

※※※

 

「おうちにおかえり」

「いきなり何ですの!?」

 

 前章をあんな終わり方にした癖によく現れたな。

 

「最終章だからこそ私をのけ者にするのは許しませんわ!」

「美咲……一応言うぞ。この世界獣いねえけどのけ者はいるんだよ。お前とか」

「ぐぬぬ……」

「炎上したアニメの話はもう良いだろう」

 

 そうだな。ここまで炎上しかねねえ。

 

「一期は良かったのだがな」

「そうだな」

「放置しないで欲しいですの!」

「はあ……んで、今日は何だよ。もうあんな鬼ごっこは嫌だぞ」

「私も死ぬかと……いや死にましたわ」

 

 死んだのか。あの後。

 

「吾らも苦しんだし仕方なかろう」

「もう死ななくて良いからな」

「心配などしなくて結構ですわ」

 

 いや別に私は構わねえけど、見てて飽きたって話だ。

 

「飽きられる筋合いなんてありませんわ! 私は今日こそ勝ちますわ!」

「はいはい。で? 今日は?」

「ゲーセンにおりますし、今回は!」

 

 美咲が勢いよく指さした先にあるのは、太鼓の〇人。

 

「太鼓の達〇で勝負ですわ!」

 

 最後に選ぶ勝負の割にスケールが小せえな。

 

「黙れですわ!」

 

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