第四百五十七話 三姉妹の絆編 その五
そのまま辿り着いたのは、少女の選択肢の一つにあったカフェ。
看板には『カメダ珈琲店』と書かれている。
「最終章なのに新しいパロネタか……」
コメディやらない宣言はなんだったのだろうか。
それに元ネタがシロノ〇ールが美味しいチェーン店にも関わらず、この店は個人経営の店らしい。
「取り敢えずここにしましょう」
手を引かれやってきたのは良いが、どうやらこいつの適当な選択らしい。
「お前ここの店入った事あるか?」
「いいえ」
「じゃあアンスタの写真見たか、ググった事ある?」
「いいえ」
こいつおばあちゃんか何か?
「どうしました? 私をじっと見てますけど……」
「どうしたんですか?」
「取り敢えずお前まともになりてえんだよな?」
「はい」
「早速一つ見つけた。今回ばかりは入ってやるが、次からちゃんと自分で調べて料理がおいしいと確証を得られる店に誘え。片方が好みじゃなかったならまだ責任を取れるが、両方アウトだった場合責任取れねえだろ?」
「はい」
「まああの店の名前もじった店ならそんな事なさそうだな……」
少しだけ期待しながら、私は店の扉に手をかける。
対して少女は……。
「えーっと……」
「おい……」
「なんでしょう?」
「何してんの?」
「いや……ですからメモしてるんですよ。紙も筆もないので、指の爪で傷を作って血文字で」
「スマホって知ってるか?」
「私……持ってないんですよね」
ゑ……。
どゆこと?
最初ヤクの売人だとか頭おかしそうとか思ったけど、このご時世でスマホ所持してない同い年くらいの女の子とかいるのか?
反対に年上で働いてるとかだったら尚更おかしいし。
「えっと……色々お前に聞きたい事があるから嘘吐かずに答えてくれ」
「友達の貴女の頼みなら大丈夫ですよ」
「お前歳いくつ? 学生か?」
なんかSNSの出会い厨みたいな質問になってしまった。
「それは……私にも分かりません」
「……? 分からねえ?」
「はい……実を言うと私、記憶喪失らしいんです」
展開が急すぎて全くついてけねえよ。
「記憶喪失?」
「偶然あの公園で先日目覚めたばかりで……自分の事もよく分からないんです」
「名前とか家族も分からねえ……そんなとこか?」
「あ……名前なら思い出せます。
「心美……か。流石に親までは分からねえか?」
「親……。そこまでは分かりません……」
「そうか……。あ、そういや私名乗ってなかったよな?」
「そういえばそうですね。友達なんですから、教えてくださいよ」
「まだ認める気にはなれねえけどな……。私は初、浅井初だ」
「初……今時の人にしては変わった名前をしてますね」
「はあ?」
「どうしました?」
「いや……今までこの名前に対してそういう意見言われた事ねえから……なんか新鮮だな、と」
「なんかおばあさんみたいな名前です」
私が老けてるって言いてえのかこいつ。
「昭和だったら普通なのかこれ」
「少なくともこのご時世でその名前は古臭いと思います」
ただそれ最終章でするネタではねえな。
もっと最初にやれよ。
「それはそうと、早く店に入りませんか?」
「取り敢えず……記憶喪失とかお前の名前は分かったから入る前にする事がある」
「なんでしょう?」
……。
「その血塗れの手を何とかしてくれ」
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