第三百六十八話 年末 その一


 十二月三十一日。

 私は異世界道具店にて、最後の時を過ごそうとしていた。

 

「テレビ……ここで見るの?」

「見る」

「何故?」

「暇だから」

 

 今年の思い出を語る相手がどうしても欲しいんだよ。

 

「なんで俺?」

「なんでって……姉さんは今日の夜十時に謹慎期限過ぎるからいないし」

「謹慎期限!?」

「ああ。姉さんあまりにも迷惑掛け過ぎて、今作者に反省させられている所」

「あの淀子ちゃんが……」

 

 私もまさか四人がかりとは言え倒せたのにびっくりだ。

 

「主に母さんと三栄のおかげだけど」

 

 母さんに至っては姉さんと同レベルにまで戦闘能力が上がってるし。

 もう絶対相手したくねえ。

 

「というか江代ちゃんがやってたコンボカッコいいよね」

「私も後で戦いの様子見せてもらったけどアレは良いな」

 

 パクリ技ばっかだけどな。

 

「天〇はア〇クのじゃないんだね……」

「江代が〇Eやり始めたのも覚〇からだしな」

 

 確か江代でもかなり苦戦してて、仲間を一人も失わずにクリアするのに三週したとか。

 ゲーム得意な江代にしては珍しい。

 

「江代ちゃんクラシック派なの?」

「あいつ一応プロでも十分やってける程のゲーマーだぞ。スマ〇ラめっちゃ上手いし。そんな奴が極甘難易度で満足するわけがない」

「なるほどね……」

 

 作者は下手くそ過ぎて未だにノーマルカジュアルで練習中だ。

 

「あ、ガ〇使始まったよ」

「おー……」

 

 今年も期待出来そうだ。

 

「そう言えば思ったんだけどさ、浅井三姉妹でもガ〇使ネタやれば尺を

「やめろ」

 

 それ作者一度考えたけど諦めて挫折した奴。

 

「はあ……」

「年末にため息吐かないでよ……今年の思い出は?」

「今振り返ってるから、ため息吐いてんだよ」

 

 終わり良ければ全て良し。なんてことわざがあるけど、ホントに終わりくらいしか良い思い出がない。

 

「それは悲しいこった……」

「だろ?」

「残りの尺あれだけど、総集編的な感じでやるの?」

「総集編ねえ」

 

 この話の総集編読みたい奴なんているのか?

 

「というわけで総集編は却下」

「まだ誰も何も言ってないよ……」

「てか遠藤、年越しそば食べたい」

「そば……今うちに置いてないから買ってくるよ……」

「おう」

「……と言いたいところだけど、大晦日のスーパーとか混んでいる気しかしねえ」

 

 諦めんなお前。

 

「てか家で食べなよそれなら」

「家にいたくないんだよ……」

「じゃあ……カップ麺で良い?」

 

 仕方ないか。

 

「いただきます……の前に白飯くれ遠藤」

「ここ定食屋じゃないんだけどなあ」

「文句言わない」

「文句言ってるのは君」

 

 カップの天ぷらそばを白飯抜きで食う馬鹿などこの世界にはいない。

 

「そういうレベルなの!?」

「私と作者の名言」

「迷言でしょ」

 

 ご飯の上に天ぷらを乗せる。

 

「なるほどね」

「そう。ご飯の上に天ぷらを乗せる。これ常識」

「へえ……」

 

※※※

 

「お代わり」

「帰って」

「いやまだ年越しまで時間あるしまだ食べてえ」

 

 どうせ太らないしな。

 

「そうじゃなくてあと一つしかないからこれ無くなると俺の分が……」

 

 チリンチリン♪

 

「ふっ、吾も参ったぞ」

「やっぱ私帰る」

「おい」

 

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