第三百五十一話 先輩とのデート その一


 バイト先のユニアカにて。

 

「あ、あの先輩!」

「ん?」

 

 事務所で書類を見ていた先輩に、私は声を掛ける。

 緊張する。

 言えるだろうか。

 今にも頭を打ち付けたい。

 

 馬鹿か私は。

 

「どうしたの?」

「あの……その……明日は……」

「明日?」

 

 あーもう! なんで簡単な事も言えねえんだ私は!

 

「開いてますか?」

「? うん」

「じゃあ……その……」

「うん」

 

 頑張れあともう少し。

 

「私、先輩の上に乗りた……じゃない」

「?」

「先輩と、お出かけしたいです……」

 

 言えた……。

 

「良いよ」

「本当ですか?」

「うん。えっと……

 

※※※

 

 帰宅後……。

 

「……」

 

 あの時間が、頭の中から離れない。

 誘おうとしていた……あの時間が。

 

「うわあああああああああああああああああッ!!」

 

 ……。

 確信する。

 

「勝った……計画通り……」

「アンタがやるとマジで悪人にしか見えないわ」

「うるっせええええええええええッ!」

 

 回し蹴り。

 

「あ」

「……死がお望み?」

「うわあああああああああああああああああッ!!」

 

 どう見ても台詞使いまわしです。お疲れ様です。

 

「いてえ……」

「はしゃぎ過ぎで私にダメージ与えるのやめなさいよ」

 

 与えられてねえんだけどな。

 

「危害を加えた事が問題よ馬鹿」

 

※※※

 

「で……何があったのよ」

「教えねえ」

「……は?」

 

 こいつに教えたら、明日のデートが破壊しつくされてしまう……ッ!

 

「まあ分かるけどね」

「じゃあ聞くなよ」

「きみは

じつに

ばかだな」

 

 某猫型ロボットみたいに言うなし。

 

「原作のあれは好きね。サイコパス過ぎて」

「いやの〇太が可哀想だからやめろ」

「アンタって眼鏡掛けたらのび〇……いや〇び太以下ね」

 

 何だと!?

 

「の〇太だって、最終的にはしず〇と結婚出来てるのに、アンタは好きな人一人ですら手に入れられない悲しい女じゃない」

「お前のせいでな!」

 

 この姉売っぱらって猫型ロボット欲しいくらいだよ!

 

「まあ話を戻してさ、分かるなら聞くなよ」

「だから馬鹿ね。また邪魔するに決まってるじゃない」

 

 ここまで堂々と言うお前も十分馬鹿だよ。

 

「私の妨害には逆らえないからね。仕方ないわね」

 

 ジャイ〇ンめ!

 

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