第三百三十四話 十二月一日


 十二月一日。

 ……リア充どもが蔓延るクソみたいな行事まであと二十四日。

 

「……」

「お腹痛いの?」

 

 なわけねえだろ。

 

「私とお前にとっては地獄みたいな日が、あともう少しで来んだよ。CMでもたまに言われてるだろ? クリスマスが今年もやってくる♪って」

「……ああね」

「何が今年もやってくる♪だよ! 良いよその日だけ来なくて良いよ……」

 

 どうせ彼女いねえし……その日仕事だし。By作者

 

「やめろ作者。お前のせいで、お前の願望みたいになってんぞ……」

 

 良いもんテメエらは勝手に彼氏でも作って〇ってやがれバーカ! うわあああああああああああん!! By作者

 

「……」

「……」

 

 何だろう。全然可哀想に見えねえ。

 

「そうね」

 

 てか泣きながら立ち去るな気持ち悪い。

 

※※※

 

「江代に彼氏出来たらしいわね」

「ああ」

 

 姉さんはいなかったけど、もう私からしたら、今更?って感じだがな。

 

「てか私はお前がツアーの為に学校数日も休んでたのが驚きだぜ」

「生アイドルって良いものよ」

「私あんま三次元のアイドル興味ねえし……」

 

 (てかミーハー女があまり好きでは)ないです。

 なのに私の周り江代と和泉以外ミーハーばっかだからなあ。

 

「アンタそれブーメランだって気付いてる?」

「何で私がミーハー!?」

「アンタが京極先輩好きなのもイケメンだからでしょ?」

「……」

 

 いや、違うのよ姉さん。

 私は性格も最高だから先輩に抱いて欲しいのよ?

 

「『も』って事は顔目当てでもあるって事よね?」

「無駄な所で頭使うな馬鹿。それをもう少し学業に活かせれば、留年確定とか言われずに済むんじゃねえか?」

「私の場合教師脅せば済むしね」

 

 これだから脳筋は怖い。

 

「学力ないなら筋肉鍛えれば良いのよ」

「お前みたいになれるのは世界中どこ探してもあんまいない気がする」

 

 三栄が奇跡なだけだからな?

 

「てかこれ読んでる人そいつの存在覚えてるの?」

「……それもそうだな」

 

 確かに最近登場してねえし……。

 

「うわあああああッ! すみません!」

「良いんだ。分かってくれたなら……。奪ったものは、きちんとそやつに返すのだぞ」

「は、はい!」

 

 ……いた。

 

「噂をすればって奴ね。どうせこの長い期間会ってないんだし普通に帰りましょ」

「……」

 

 さて普通に帰れるのだろうか。

 

「待て」

「……!」

 

 やはり気付かれたか!

 

「……その気配、久しぶりだな」

 

 振り向く三栄。視線は姉さんに向いている。

 

「……久しぶりね。三栄」

「……」

 ゆっくりと歩を進める三栄。そして木刀を腰に差し、

 

「久しぶりにくれてやろう……」

「ええ。かかってきなさ

「……」

「ゑ?」

 

 姉さんを素通りし、

 

「ほら、食え」

「にゃー♪」

 

 猫に餌をあげた。

 

「お、優しい」

「……」

「姉さん?」

 

 三栄に無情にも、拳が振り下ろされた。

 

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