第三百三十話 江代の恋 その十一
「? 君は? どこかで会ったかな?」
「……」
さて、どこかで会った事を臭わせた発言をしてしまい、相手もそれに食いついた。
こうなれば……。
「悪い。色々話したい事があるから署まで来てくれるか?」
「? 警察?」
「はい警察です。なので話は署で聞きましょう」
「ゑ? 僕何も悪い事してないよ……」
「怪しいことしてるから行くの。分かる?」
「う……うん」
「行くぞ!」
「わ、わあっ!」
私は彼を背負って公園まで駆けた。
※※※
「先に言うぞ……ごめんなさい」
「? やっぱりあの話……嘘?」
「はい嘘です。ただ私は君の知り合いの関係者だから、それがバレてしまった以上隠れてみたのを謝罪する義務がありましてね」
「い、良いから顔上げて」
……。
「はい」
「えっと、まず君の事を教えて欲しいな」
何この拒否不能な爽やかさ。
先輩には及ばないとは言え、しかも顔は可愛い。そりゃあ江代も惚れる筈だわ。
「私は浅井初。苗字に多分聞き覚えあるよな?」
「浅井……あれ? 江代ちゃんの家族?」
「そうだ」
「うーん、あまり似てないね」
「よく言われるぜ……」
ほっとけ。
「んーっとさ、江代とは何で付き合う事に?」
「そ、それ聞くの?」
「姉としてどこの馬の骨とも分からん奴と、うちの大事な妹を黙って付き合わせてるわけにはいかないな」
どうでも良いけど。ただ気になっただけ。
「あーうん、えっと……長い話になるけど良いかな?」
「大丈夫。長い話はカットか早送りすれば良いし」
「?」
先輩と同じでメタには足突っ込めない感じか。
※※※
「僕は昔から、重い病気持ちだったんだ。だからかあまり学校にも行けてなくて、今も外出出来てるけど、入院しながらだと色々制限があるし……」
「なるほどな……」
え、ワンチャン病気にもよるけどさっきの乱暴な連行で死ぬ可能性あったじゃん。何やってんだ私。
「でもある日、公園で江代ちゃんに会って、子供たちと楽しそうにしてるのを見て元気をもらった。それからよく話すようになって……段々好きになってさ。それで江代ちゃんに告白して、付き合うようになったんだ」
「……」
羨ましい。
「江代ちゃんは凄いよ。いつでも自分に正直で、闇の騎士……とか名乗っててカッコつけてるところあるけど、それでもそれが自分なんだって誇って生きてる。僕は自分に言い訳ばかり……」
「お、おう」
なんかこいつの話聞いてると、江代のイメージがすげえ変わってくるな。
この子が姫だとしたら、江代がすげえイケメン王子っぽく見える。
「王子様か……確かにそうかもね」
あれ、心の声聞いた?
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