第二百五十話 浅井三姉妹の誕生日


「何過去編の語り手なんてやってんのよ」

「作者の指示だ」

「もう皆下いるわよ」

 

 皆?

 

「それは家族だけか?」

「違うわよ」

 

 主人公の誕生日イベントってキャラが結構揃うみたいな展開あるけど、それが変人ばかりとなると……。

 

「私はここでいいや」

「いや何言ってんのよ」

 

 というかお前と関わりたくねえ。

 

「取り敢えず仲良く醤油一リットル飲め。そしたら参加してやる」

「天丼ネタもここまで来ると飽きてくるわね」

 

 うるせえもうネタがねえんだよ。

 

「今のアンタなの? 作者なの?」

「……どうでもいいわ」

 

※※※

 

「とにかく私は行きたくねえ」

「わがままねえ……」

 

 せめてお前が消えてくれ。

 

「あ、因みに美咲もいるわよ」

 

 何で来たんだよ。

 

「そいつは料理にでもしとけ」

「大丈夫。美咲解体ショーやるって母さんが」

 

 今のジョークのつもりだったのにマジでやってんのか。

 

「文化祭でやりかけたアンタがそれ言う?」

 

 良いんだよあいつなんてどうでも。

 今すぐ何かしらの災厄が降りかかって死ね。

 

「アンタ口悪いわね~」

 

 お前は態度が悪い。

 

「てかホントにつらいのはさ、この世界シリアスモードに入ってない限り人死んでも蘇るからどうせ美咲はどれだけぐちゃぐちゃにされても、次の章出るわよ」

「わーめんどくせ」

 

 取り敢えずリ〇ロ世界に突き落として、何度も苦しむ光景を見てやりたい。

 

「それは私も同感ね。面白そう」

「だろ?」

 

※※※

 

「それはそれとしてさ、行かないの?」

「行かない」

「先輩が来てる……って言ったら?」

 

 何だと?

 

「どうしてそれを先に言わない?」

「……」

 

 何故黙った?

 

「まあ来てみれば分かるわよ」

 

 怪しいな。

 

※※※

 

 取り敢えず姉さんの誘いに乗って、一階へ。

 だが……。

 

「なあ姉さん」

「なによ」

「先輩は?」

「あそこ」

 

 ……。

 

「どう見ても遠藤だろアレ」

「先輩よ」

「ふざけんな!」

 

 あんなんで私を騙そうとか百年早いわ!

 

「まあ良いじゃないの?」

「はあ……しょうがねえな」

 

「初ちゃん!」

 

 和泉の声。

 

「淀子っち!」

 

 優香の声。

 

「江代お姉ちゃん!」

 

 近所の子供たちの声。

 

「皆!」

 

 親父とお袋の声。

 

「んんんん~!」

 

 そして解体され始めてる美咲の声。

 

「お誕生日! おめでとう!」

 

 ……。

 

「まあ良いか。たまには馬鹿どもに祝われるのも、悪くないかもな」

「そうでしょ?」

「ふっ、左様」

 

 何だかんだで、一つ歳を取り。

 私達は十七歳になった。

 

「んんんんんんんん! んんんんんんッ!」

 

 美咲はあとで美味しくいただきました。

 

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