第二百四十一話 父親 その三
リビング外の廊下にて。
「そろそろ始まるな……」
「ふっ、了解した」
私は耳を壁に当てた。
※※※
「なんで俺が君達を正座させてるか……分かるか?」
あくまで怒鳴るのは最後にするのな。
優しい親父らしいやり方だ。
「ん~。永政さんが最近それでたつようになったから?」
こいつは何を聞いてるんだ?
「……淀子はどうして正座させられてると思う?」
「知らない。てかなんでこの馬鹿と一緒に説教されなきゃいけないわけ?」
「あらあら淀ちゃん。馬鹿って誰の事?」
「どうせ乗っかっても勝てない癖によくやろうと思うわね」
取り敢えずいきなり喧嘩始めようとするのやめろや。
「作者さん呼んででも今回の喧嘩は勝たせてもらうわ」
「それでも抵抗するわKO☆BU☆SHI☆DE」
「じゃあ私は包丁で」
「包丁使ってでしか私倒せない癖にイキってんじゃないわよ」
てかイキるイキらない以前に包丁で姉さん殺せるわけがねえ。
「とにかくだ。初と俺は君達に困らされている。もう少しそれを自覚してくれないか?」
「あらあら永政さん。たまにしか家に帰ってこないのによくそんな事言えたわね」
「……ッ!」
まあ確かにそれは思うけども……。
仕事だからな……。
「永政さんこそ、仕事場で別の女と寝てるなんて事はないわよね?」
「な、ないに決まってるだろ!?」
まあこんなのが奥さんだったら気持ちは分からなくないけど。
「ふっ、ついに吾にも弟か妹が……」
「不倫を笑いのネタにして良いのかどうか微妙だからそこでやめとけ?」
「だが断る」
このショタコンが……。
「というか父さん、私をこの馬鹿と同列に語るのをやめてくれない?」
「いやもうどっちがどっちでも良いわ」
「アンタ最低ね。この四十近いババアと一緒にするなんて」
「誰がババアよしばくわよ」
「何で俺がやられるの……?」
頑張るなあ……。
「パパ可哀想……」
「……」
取り敢えずまだ動かない。
※※※
「あと市華。お前はいい加減酒を控えろ」
「あらあら嫌よ」
別にそこは良いわ。
むしろ飲み過ぎで死ね。
「貴様……なんてことをッ!」
「私に買いに行かせなければそれでいい」
何ならあとであいつが飲みそうな酒の中身を醤油と入れ替えておこ。
「ダメ!」
「お前はいい加減やめろ」
うぜえ。
「そして淀子はカツアゲをやめろ」
「え? やだ」
「即答だな……」
「当たり前よ」
こいつが食う奴にも醤油一リットル掛けとこ。
「……あ、これなら上手くいくな」
姉さんとお袋は仲が悪い。
小細工をしても気付くが、どうにかして食わそうとするはずだ。
どっちかがあの世に逝けば……少しは楽になる。
「ぐへ……ぐへへ……」
「おい貧乳。聞こえてるし計画バレてるからこっちに来なさい」
「……」
クソが。
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