第二百三十九話 父親 その一


 散々だが甘い恋の話で終わりそうだった所を、姉さんがシリアスブレイクしてから数日後の放課後。

 

「なんか凄い事があったんだね」

「まあ楽しかったけど」

「そういえば美咲ちゃんを見てないけどどうしたの?」

「それは知らない」

 

 恐らく病院ないし墓場。

 

「来年も楽しみだね」

「来年はもっとマシな展開を期待するよ」

 

 取り敢えず戦闘は無しで。

 

「というか腕はどのタイミングで治ったの?」

「それも知らない」

 

 ギャグラノベなんだからそんなん気にしなくて良い。

 

「お、初? 初か?」

 

 ? この声は。

 

「久しぶりだな」

 

 声の方に振り向くとそこには。

 

「親父!」

 

※※※

 

 浅井永政あざいながまさ。それが私の父親の名前だ。

 娘の私が言うのもなんだが、かなりのイケメンだ。

 もう四十過ぎていると言うのに、まだどこか男子高校生にも見える。

 そして極めつけは。

 

「確か和泉さん、だよね?」

「え、は、はい」

「いつも初と仲良くしてるんだってね。ありがとう、これからもよろしくね」

 

 私以上の常識人。

 学生時代はかなりモテていたらしい。

 

「まあキャッシュカードを嫁に盗まれてる時点でどうかと思うけど」

「え、淀子お前いたの?」

「ん? 瞬間移動」

 

 遂に使いやがった……。

 

「いつかは使うと思ってなさいよ。死ぬわよ?」

「やるなよ」

 

 私がそれで死ぬ光景とか想像したくねえし。

 

「淀子。初を怖がらせるのはやめろと何回言ったら

「黙りなさい」

「はい……」

 

 弱いなあ……。

 

「市華と江代は家にいるかな?」

「さあな」

 

 母さんに関しては考えたくもない。

 

「久しぶりに市華の手料理が食べたくて、有給取ってきた」

「よくキャッシュカード握られてる身で言えたわね」

 

 てかそんな事言ってるとまたキャラを忘れてもらおうと旅行しようとするだろうが……。

 

「私もやろうかしら」

「お前は無理だ」

 

 キャラ濃すぎて誰も忘れねえよ。

 

「てかボケがいなきゃ成立しないしねこれ」

 

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