第二百二十二話 文化祭準備 その五


「二つ目と三つ目は?」

「二つ目は最近新規でオープンした異世界ものですね」

 

 お、異世界ものか。

 こりゃあ人気間違いなしだな。

 

「どんな感じなんだ?」

「貴女はある日死んでしまい、とある世界に異世界転生します。そこで先輩と出会って冒険を始めます」

「お、すげえ良いじゃんそれにしてくれ」

「あ、でも良いんですか?」

「良いに決まってるだろ」

「この世界でのシナリオではネタバレになるので詳しい事は言えませんが、第一章で先輩が殺されます」

「どういう理由かは敢えて聞かないけどやっぱり却下」

「言うと思いましたよ」

 

 先輩が死んでしまう世界に用はねえ。

 

※※※

 

「あまり期待はしてないが、三つ目は?」

「この世界は全く以ておススメ出来ません」

 

 随分言うな……。

 

「初さんはパソコンを持ってますか?」

「いや持ってねえな。江代と作者くらいじゃねえの? パソコン持ってるの」

 

 しかも江代のノーパソはスペックが高い奴。

 これだから高給取りは……。

 

「五分以内で死ぬゲームってありますよね」

「いや……絶対嫌だぞ」

「あれに先輩に殺されるというイベントが付くというオプションを……」

 

 え、先輩に殺してもらえるの?

 

「は?」

「先輩に殺してもらえるんだよな?」

「え、ええ……何なら面接時に申し出をすれば先輩に殺されないとクリア出来ない風にするとかも可能です」

「全然良いぜ! 先輩に殺されるなら、私は幸せだぜ……」

「(あれ、もしかして私ヤバい人相手にしてるのか?)」

「ん? 何か言ったか?」

「いえ、何でもありません。それでは紹介状を渡しますね」

「おう、頼むぜ」

 

 無限ループの世界で先輩に殺される……ぐへへ。

 

「それではあちらの扉から、この世界を探して紹介状を投げ入れて下さい」

「投げ入れるの?」

「数日後に貴方様に面接のお知らせが来ます」

 

 面接の練習しとかないとなあ。

 

※※※

 

 言われた通りに紹介状を投げ入れ、私はひとまず浅井三姉妹世界へ。

 

「面接に合格すれば、私の幸せな人生が待っている……」

 

 夢が広がるっていうか、夢しかねえなあ。

 

※※※

 

 そのまま学校へ。

 

「おう、戻ってきたぜ」

「初ちゃあん!」

「なんだよ和泉……話し合いはどうなったんだ?」

「あれ」

 

 ……作者、お前また死んだのか。

 

「まあ良いよ、どうせあいつ蘇生するし」

「うん……」

 

 うんじゃねえよ。By作者

 

「お前が弱いのが悪い。てかうちの奴らにやられたのな」

「うん。かくかくしかじか……」

「なるほどな。和泉の手助けをしてたらあんな事に……」

「うん」

「私の役目がどれだけ大変か分かっただろ?」

「うん……」

「あ、でも因みに私、先輩と一緒にこの世界出て行くからこれからは作者か和泉が主人公な」

「え!?」

 

※※※

 

「そういう事だ。よろしくな」

「え、む……無理だよ~」

「私はそれでもやってきたんだ。和泉頑張れ」

「初ちゃんいなくなるのも嫌だ!」

「私はこの世界にいるのが嫌だ」

 

 今まで私はずっと我慢してきたんだ。もう私の思う通りにやらせてもらう。

 

「……」

「じゃあな……」

 

 そのまま私は、教室をあとにした。

 

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