第百五十一話 浅井三姉妹のSUITSな日常 その五


 一応勝負は決まらなかったけど……。

 

「もうほぼ負けたようなもんだろこれ」

 

 相手は勝たなきゃ惨殺するとか言ってるけど。

 

「あれやられてよくまだ戦いますとか言えるなあおい」

 

 尊敬しても良いですか?

 

「お困りのようですね。遠藤さん」

「……誰?」

「私ですよ! 美咲です!」

「あ~、例の稼ぎ頭の」

「そうですわ。崇め奉りなさい」

「特に理由が無いのでパス」

「なっ! 遠藤の癖に生意気ですわ!」

「お前こそ章によって口調が固定してない癖に偉そうなんだよ!」

 

 もうここまで来るとわざとにしか見えない。

 

「貴方、私に言ってはいけない事を……ッ!」

「ゑ……」

「それを二度と言うなァっ!」

 

 ヤバい。かなり気にしてたらしい。

 

「だからってビンタするこたぁねえだろ!?」

 

※※※

 

「なるほど。敵になった淀子さんに手を焼いていると」

「うん」

「良いでしょう。やっぱり仲間になりますわ」

「マジで?」

「ええ。一章から三章まで、浅井家の方々には苦しめられてきました。だから、ここで何とか倒してみるのも良いかも知れないですわ」

「それは分かったけど……」

 

 勝ったら淀子ちゃんに殺されちゃうんだよなあ。

 

「心配いりませんわ。私を誰だと思ってます?」

「口調が固定しないかませ眼鏡」

「もう一回引っ叩きますわよ」

「いやいや! お美しい生徒会副会長!」

「そして今は!」

 

「稼ぎ頭でイキってるかませ弁護士!」

 

「……」

「……」

 

 ん? これは俺じゃないぞ。

 

「へー、アンタ達組む事にしたんだ~?」

「よ、淀子ちゃん!?」

「これはこれは浅井淀子さん。何の用ですか?」

「アンタホントに私に勝つ気でいるわけ? 二章であんな風に負けたのに?」

「一度の敗北で地をつく程、私は諦めの良い性格はしてないですわ」

「アンタ多分すぐ早死にするタイプね」

「貴方方を倒すために死ぬのなら本望!」

「あ、馬鹿だ。この子馬鹿だわ」

 

 お前もだよ。

 

「絶対に負けませんわ!」

「あっそ。悪いけど私もだから」

 

 これで良いのだろうか……。

 

※※※

 

 裁判当日。

 

「それではー……開廷しまーす……」

 

 あれ、裁判長元気ねえな。

 もしやこの前の裁判が滅茶苦茶になった事を気にしてるのか?

 

「裁判長、どうかされました?」

「この場で言っても良いんですか?」

「はい。何か普通の話とかして安心したい気分なんで」

 

 あの裁判の話題出されても普通じゃなさそうだけどまあ良いや。

 

「実は」

「実は!?」

「妻と離婚しました」

 

 普通の話題だ。

 

「なるほど……。それは辛い筈です。何か理由に心当たりはありますか?」

 

 我ながらよく上から目線でこんな質問したな。

 

「多分アレが起立しなくなった事かな」

「ごめんなさいその話ここで打ち切らせて下さい」

 

 女の子が多い所でする話じゃねえ。

 

「しょうがないですわ……。なら、今回の裁判は裁判長が喜ぶ形で決着を付けましょう」

 

 ゑ?

 

「な、なんですと?」

「裁判長! これを見てください!」

 

 なッ! 胸だと!?

 

「これはッ!」

「これは例えイ〇ポでも……」

「さ~いばんちょ~!」

「なッ!」

「あんな眼鏡女のおっぱいより~! 私の方が~!」

「んおおおおおおおおおッ! んひいいいいいいいいッ!」

 

 死ね!

 

※※※

 

「判決を言い渡す。被告は原告に対し、十万円の損害賠償金を支払うように!」

「やりましたわ~!」

「美咲ちゃん……君凄いね」

「エリートをあんな顔だけの猿と一緒にしないで欲しいですわ!」

「遠藤」

「よ……淀子ちゃん」

「もう分かるわよね? あとで屋上に来てもらうから」

 

 嫌だァァァァァァァッ!!

 

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