第百四十九話 浅井三姉妹のSUITSな日常 その三


 そもそもこの二人の弁護士がどうして出会ったのか、それは物語の時系列で数週間前に遡ることになる。

 

※※※

 

 俺は所長……浅井江代の前に立っていた。

 

「遠藤安信」

「はい」

「貴様をシニアパートナーに昇進させようかという話が、実は我々の所で上がっている」

「シニアパートナー……ですか?」

「そうだ。貴様は平凡な弁護士だが、凄く努力家だと判断している。だから昇進を考えているのだが……」

 

 努力だけで昇進出来る世界じゃねえだろ弁護士……。

 

「貴様には、アソシエイトを付けてもらわなければならない」

「アソシエイトかあ……」

 

 まあ確かに欲しいとは思ってたけど……。

 

「というわけで、試験をやってもらう」

「ここって元ネタみたいにハーバード出身しか雇わないみたいなルールあんの?」

「吾がそんな鬼畜な人間に見えるか?」

「そ、そうだよね。江代ちゃんがそんな事するわけないよね」

「ただ、ちゃんとした人材を連れてくるのだぞ」

「まあ……ちゃんとしてない人材なんて連れてこようが無いんだけど……」

 

※※※

 

 まさかフラグになる筈、ないよな。

 

「……」

「……あの」

「何よ」

「何で血塗れなの?」

「警官殺しちゃって……」

「俺、弁護士だけど……」

「だから何よ」

「弁護しようか?」

 

 無理だけど。

 

「てかさ、何してそうなったの?」

「友人が麻薬を運ばせたのよ。まんまと罠にハメられた。あとであいつ殺すわ」

「いや人殺しはやめなよ」

 

 困ったなあ……このまま放したら捕まっちゃうだろ。

 

「ねえ、私弁護士やりたい」

「は?」

「ここ試験会場なのよね」

「いや、悪いけど君を雇うわけには

「あ?」

「何でもありません」

 

※※※

 

「じゃあ試験していいか?」

「うん」

「弁護士になりたい理由はありますか?」

「公務員って収入安定してるじゃない? カツアゲしなくても飯が食えればそれで」

 

 弁護士って公務員じゃないんだよなあ……。

 

「なら検事とか……」

 

 いやこいつと戦ったら脅されて有罪にされそうだからやだな。

 脅迫罪で捕まれば良いのに。

 

「あ、そうだ。アンタバイク持ってない?」

「え? 俺のは無いけど」

「外にはある?」

「あるけど」

「良かった。免許あるから警察来たら盗んで逃げるから」

「尾〇豊かテメエは!」

「逃げる手段なんて選んでられないわよ。あ、それと逃げた場合でも採用は採用だから」

「採用したくねえよ!?」

 

 あ~……もうどうしたらええんや。

 

 ――ドンドンドン!

 

「警察だ! 開けろ!」

「あ、サツが来たわね」

「警察来ちゃったよ!」

「逃げるわよ」

「いや自首し

「嫌よ。ここにお金置いて逃げれば大丈夫よ」

「どうあがいても無理な気がするんだけど!」

「私を信じなさい」

「やだ」

 

 まあこの後何やかんやあって、

 

「こいつが新人です」

「淀子よ~。よろしく~」

「ふっ、よろしく頼むぞ」

 

 経歴詐称した事、バレないと良いけど。

 

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