第百十七話 江代 馬鹿達の戦国 その五


『一五八三年 賤ケ岳の戦い』

 

「秀吉め……どんな手を使ってでも信長様のあとをわしに譲らぬ気だな」

 

 えらいこっちゃ。

 

「我が賤ケ岳城に……バナナの皮と猿の糞を投げおって」

 

 マジもんの猿がバナナ投げてるッ!?

 

「柴田殿……信長様のあとを継ぐのは、この秀吉じゃ!」

 

 オメエ清須会議遅れたくせに偉そうだな!

 

「そ、そうだ! 信孝様に増援を!」

「信孝なら下剤で厠に籠っておる」

 

 卑劣過ぎるわ!

 

「くそっ! 籠城するしかないのか……ッ!」

「ふっ、吾に考えがあるぞ勝家」

「なんだ江代」

「吾が秀吉と戦う」

「何を言っておる!」

「吾を信じろ」

 

 なんだ……一体何が始まるんだ!?

 

※※※

 

「うおおおおおおおおッ!!」

 

 策無しで突攻! 何してんだ江代!

 

「バナナや糞如きで、吾を倒せると思っているのか愚民め! 浅井江代! いざ参る!」

 

 すげえ様になってる……。

 いや、待て……。

 

「江代ォォォォッ! わしを盾にするなァァァァッ!!」

 

 勝家ェェェェェェぇッ!!

 

「ふっ……勝家! 信長の家臣なら、死ぬ気で秀吉に喰らいついて後を狙ってみせよ!」

 

 いや死んじゃうから!

 バナナとか糞とかくっついて色々ヤバいから!

 

「うわあああああああ! 助けてくれェェェェッ!!」

「ふひっ! はははははッ!!」

 

 もうやだこの狂戦士。

 

「な……もう勝家殿の兵が! あれはッ!」

「うおおおおおおおおおッ!」

「江代! 何故貴様が!」

「秀吉! お命頂戴!」

「うわあああああああああッ!!」

 

※※※

 

「こ……今回は見逃してやる……。お、覚えてろォォォォッ!」

 

 ……。

 

「ふっ、勝てたぞ勝家……?」

「……」

「勝家ェェェェェェッ!!」

 

『これが賤ケ岳の戦い。勝家の死によって、秀吉の時代が本格的に幕を開けたのだ』

 

※※※(後日談)

 

 戦いの後、秀吉は関白に就任する事になった。

 その時、江代と茶々は。

 

「秀吉殿と結婚する事になったわ」

「ふっ……そうか」

「江代?」

「なんだ……まだ用があるのか?」

「私、秀吉殿と結婚する事になったのよ」

「ふっ……そうか」

「じゃなくて! なんか見送りの言葉とか! 無いの!?」

「無い」

「……」

 

 すみません家の妹が馬鹿で。

 

「別れに多くの言葉はいらない。そう思うだろう?」

「そう思うのは江代だけだと思うよ?」

「貴様……甘えるのも大概にしたまえよ」

「え……?」

「吾は彼氏すら出来た事ないのだぞ。何故結婚した奴を祝わねばならない?」

「いや……一応礼儀として」

「知らん。吾をおいて結婚してしまう茶々など嫌いだ!」

「え~……」

 

『こうして茶々は秀吉の側室となり、淀殿となりました』

 

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