第三十九話 姉さんの恋 その五

「いやぁ、良かった良かった。これで何もかも解決して」

「……ゑ?」

「私、あの後連絡先交換出来たの! これからゆっくりおとしていくわよ!」

「へぇ、そうなんだぁ……」

「何よ、そんな顔して……。私何も悪い事してないわよ?」

「嘘吐けェェェェェェェェェッ!!」

 

 いや、あのね姉さん。

 

「この状態でも、まだ私に何もないわけ?」

「この状態?」

「うん。私ね、久しぶりに骨折してここにいるわけ。ここはどこかな?」

「ん? 病院にいるのが私のせいって事?」

「いやどう考えてもそうだよね? 何で? 何であそこで本気出した!?」

「いやぁ、つい手が滑って」

「手が滑ってで済ますな……そして私の見舞いの品を喰うなッ!」

「プリン美味しい」

 

 まったくこの姉貴は。

 

「でもさ……初」

「なんだよ」

「ありがとね」

 

 え、今コイツ何語喋った?

 

「ねえ姉さん、教えて? ありがとうってどういう意味?」

「は?」

「いや、お前が正しい使い方でそんな言語発するわけないから」

「アンタ私を何だと思ってるのよ」

「暴力ゴリラ処女」

「殴って良い?」

「病院で暴れんなボケ」

 

 まあ、これで決めた事がある。

 もう姉さんの恋愛には絶対協力しない。

 

「……ん? 何か聞こえるわね」

「は?」

「あァァァァッ!」

「なんだようるさいな」

「見なさい、あれを」

 

 私は姉さんに促され、腹を押さえながら立ち上がる。

 病院の外の道、そこでは姉さんの想い人が歩いていた。

 しかも、女と一緒に。

 

「あ……」

「はい残念。また新しい恋を見つける事だな」

「初」

「何だ?」

「腹いせに殴らせて」

「あぁンまりだァァァァァァァッ!!」

 

 な、兄弟姉妹なんて。いらないだろ?

 

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