第三十六話 姉さんの恋 その二


 ……。

 …………。

 ……………。

 

「どうしたの?」

「それお前が言う?」

「何よ、私が悪いの?」

「いやどう考えてもこの状況はお前のせいだろォッ!?」

「え? なんで?」

「なんで、ってお前……はあ……」

「ねえ教えて? 屋上から男子校をスコープで覗く事のどこが異常なの?」

「お前にとっての異常の定義を教えて欲しい。割とガチで」

「?」

 

 首傾げやがって。

 しかもよりによって私のライフル使うとか……。

 

「てか江代もサボってねえでなんかしろよ!」

「ふっ、吾は今……貴様と感覚を同調している。吾にも見えるぞ……獣が人を喰らう光景が……。剣よここに! 闇を統べるは光に非ず……同じく闇だ!」

「仕事しろッ!」

「叫ばないでよ聞こえたらどうするの?」

「事の発端が何かほざいてる」

「絞め殺すわよ」

「はいすみません」

 

 ……確かにイケメンだけど、サッカーやってる所を延々眺めるだけは流石に飽きるな……。

 

「撃って良い?」

「殺されたいならご自由に」

 

※※※

 

 家にて。

 

「はぁ……なんつーか緊張した」

「あれくらいで緊張するから、彼氏出来ないのよ」

「普通彼氏欲しくてもあんな事しねえよ!? てか自分でやれよ!」

「アンタの方が頭良いし先に恋してるみたいだから頼んだのになぁ?」

「煽ってんのかこの野郎……」

「てへ」

「うわぁ……殴りてぇ」

 

 殴られるオチしか見えねえけど。

 

「何か分かった事ある?」

「いきなり話戻したな……まあ声とかは聞こえないから、あくまで視覚的な情報だけに限定されるが……」

「うんうん」

「まず、あいつはサッカー部のキャプテンらしい」

「いや、それは分かるわよ」

「お前制服姿しか見てねえだろ!?」

「あんなイケメンなのにキャプテンじゃないとか……有り得ないわよ」

「イケメン=キャプテンってどこの漫画だよ」

「え、おかしい?」

「うん。その認識は改めた方が良いぞ」

 

 こいつに俺〇語を読ませてやりたい。

 

「で、次は?」

「そうだなあ……まあ人望はありそうだぞ」

「当たり前よ」

「だから偏見で答えんなし」

「キャプテンなら人望なきゃ無理よ」

「まあ一理あるか」

 

 こいつに弱くても勝て〇す見せてやりたい。

 

「それ見た事あるわよ。二〇くんの奴でしょ」

「知ってんのかよ」

「多分だけど読者の半分以上は理由分からなそうよ」

「そうか?」

「完全にスベったわね」

「恥ずかしいから次行くぞ。あとモテモテだった」

「ちょっと待ちなさい」

「何だよ」

「アンタ使えないわね」

「はあ!?」

 

 いきなり何言い出した!?

 

「いやだってさ、さっきからありきたりな事しか言わないし、元ネタ分からなそうな事しか言わないし、普通に考えれば分かる事をペラペラペラペラ……馬鹿じゃないの?」

「一発殴らせて? お願い。マジで一発殴らせて?」

「殴り返すわよ」

「うっ……」

 

 もう嫌だこの姉さん。

 

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