第三十二話 事の経緯


 取り敢えず姉さんを部屋で落ち着かせた。幸い部屋は何ともなく、私は姉さんに話を聞いた。

 

「取り敢えずさ、何があったらあんな事になるのか知りたいよ」

 

 爆弾を喰らっても死なない姉なのだ。

普通の理論でこの大怪我の原因を理解するのは不可能だろう。

 

「回想シーン入って良い?」

「あ、うん。分かった」

 

※※※

 

 朝十時。姉さんはその時間に起きたらしい。

 

「うーん……はぁ……」

 

 もうその時間帯には、当たり前だが私と江代はいない。

 朝飯を作っておくなんて真似はしなかったからなあ、姉さんはどうしたんだ?

 

「さーて、カツアゲに行こうかしら」

 

 うん、この時点でおかしい。コンビニ行こうとかランニング行こうとか、そんな感覚でカツアゲを語るな。

 

「ぐわああああああああああッ!!」

 

 んで街中に悲鳴が響き渡ったり、姉さんが金盗ったりしたのね。

 事件そっから?

 

「うん。そしたらね……」

 

 今更だがこの文章形式分かりづらいな。

 

「それ以上は許しませんよ」

 

※※※

 

「んで、その少年に木刀でぼっこぼこにやられたと」

「うん」

 

 ……。

 

「ごめん、もう一回説明してくれない?」

「あれ聞いてなかったの? 相槌打ってたのに」

「いやそうじゃねえんだよ。信じらんねえんだよ」

 

 姉さん倒すとか、どんだけそいつ強いんだよ……。

 私は今でも覚えてるぞ……このバカが幼稚園の頃、強盗のナイフを折っかいて背負い投げした光景を。

 

「うん、ぞくぞくしたわねあれは」

「心読むなって言おうと思ったけど、私はハラハラしたぞ」

 

 実際、それからあの幼稚園を襲う者はいなくなった。

 そういう意味では姉さんは凄い奴だと思ったけど、出来るならその力を、もっと人の役に立つ事に使って欲しいものだ。

 

「そんで……そのまま家に帰ってからぐったりしていた……と」

「そうよ。あいつのせいで、今日飯食べられなかったのよ」

 

 家めちゃくちゃになったのは、まあこいつのせいだろう。

 こいつが這いながら暴れたとか。普通なら重症を負ったら無理だが、姉さんだからな……。

 有り得ない話じゃない。

 

「わ、悪かったな姉さん。これやるから」

「初のバカ。だからモテないのよ」

「うるせえ! お前も処女だろ!?」

「あのね、私はアンタみたいな対応はまずしないから」

 

 見てくれは良いのだが、こいつはこの性格のせいでモテてない。

 

「いやごめん、アンタみたいな目つき悪い奴に言われても」

「イラストいじりやめてくれよおおおおお!!」

 

 良いじゃん三白眼!

 女の子とかで三白眼可愛いじゃん!

 確かに美人とはかけ離れてるけどさ、三白眼だからなんなのさ。

 

「それ逆にコンプレックスにしか聞こえないからやめた方が良いわよ」

「うるせえええええええええええええ!!」

 

 もう嫌だこの姉貴。

 

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