第二十九話 超会議に行こう その三


 乗り換えをして数十分。幕張メッセから近い、海浜幕張駅で私達は降りた。

 長い列に並ぶ事もなく出演者控え室的な場所に向かい、そこで少し空気が変わった。

 何せこういう空間に立ち入るのは初めてだからな。こうなるのも当然だろう。

 

「なあ、本当に私が入って大丈夫なのか?」

「心配するな吾がいる」

「お前だから余計心配だ」

 

 私達が今いるのは、会議室のような広い空間。

 江代令嬢と書かれたネームプレートが置かれた所に座っている江代に対し、私は立ちっぱなしだ。

 

「あのさ、私お友達枠なんだよな?」

「そうだ」

「何で椅子とか無いわけ?」

「知らん」

「……」

 

 やっぱり来る場所間違えたんじゃないか?

 

「あれ、ここ関係者以外立ち入り禁止の筈なんだけど……」

 

 ほらやっぱりな……っておいマジかよ。

 

「え……マジで?」

「どうしたの?」

「あなた……カヨさんですよね?」

「はい」

「最終兵器私達の!」

「そうだよ」

 

 本当にヤバい所に来てしまった……。まさかあのゲーム実況者に会えるとは。

 

「これぐらいで驚愕するな貧乳の銃士」

「いや、だって! カヨさんだよ!? たまにトークがゲスい事で有名な!」

「君は私をどんな目で見てるのよ」

 

 いやごめんカヨさんそれ事実なんだ。

 次に来たのも、凄い人だった。

 

「お、カヨさん。それに江代令嬢」

「ふっ……来たか」

「馬鹿! 来ましたか、だろ!?」

 

 この眼鏡に……あの綺麗な脚。見間違う筈がない。

 

「足〇リオのPE―PE(ぺーぺー)さんですよね!?」

「あれ、君誰?」

「初めまして! あの中二病の姉の浅井初と申します! 本日は楽しく拝見させていただきます!」

「あ、うん。今日は足でアイ〇ナをやろうと思うから、楽しみにしててね」

「はい!!」

 

 いやー、次は誰が来るんだろう。

 

「貧乳の銃士よ……気持ち悪い」

「うるせえてめえは黙ってろおおおおおおッ!!」

 

 いや、こんな機会逃せるわけがない。私じゃ一生近くでお目に掛かれない人ばかりだぞ。

 

「なんなんだあの貧乳」

 

 今何か聞こえたけどまあいいや。

 

※※※

 

「貧乳の銃士……頼みがある」

「なんだよ」

「取り敢えず出てってくれ」

「はあ!?」

 

 さて、この会話を見れば分かる通り……私は追い出された。

 いや……私何かしたか?

 確かに有名人が多くてはしゃいだけどさ……。

 

「ぼっち超会議……かあ」

 

 こんな事になるなら和泉か姉さんのどっちかを連れて来ればよかった。

 しかし後悔先に立たず。

 何とか一人でも楽しみを見つけていくしかない。

 

「まずは、超歌ってみたの抽選に行こう」

 

 超歌ってみた。文字通り、カラオケのイベントだ。

 一日に数回ある抽選で選ばれると、大きなステージで歌える。

 

「今日の為に練習してきたからなあ……。ここで受からなきゃダメだろ」

 

 だが不覚にも私は気付いていなかった。この抽選に参加したという行為が、どれだけ馬鹿な事かを。

 

※今回出てくる実況者さんはパロディが多いです。決して嫌いなわけではありませんので、ご理解の方をお願いします(てかむしろ好きです)

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