第二十八話 超会議に行こう その二


 朝七時。アラームのうるささと……謎の異臭に私は起こされた。

 この異臭……なんだ?

 

「起きたか? 貧乳の銃士」

 

 仁王立ちで私を見下ろす江代。もう着替えているらしい。

 しかし……何で江代のシーツにシミがついているんだ……?

 

「江代。昨日の夜準備する前に何してた?」

「ええと……二杯コーラを飲んだぞ」

「トイレにはいった?」

「……寝る二時間前に」

「もひとつ質問いいかな」

「そのシーツ……なんでシミ付いてるの?」

「……貴様のような勘のいい小娘は好かんよ」

 

 いやあのさ……。

 

「何でこのタイミング?」

「知らんな」

「いやおかしいだろ。しかもお前十六でそれとか恥ずかしくないのか?」

「ふっ……本当に恥ずかしいのは、弱さを隠す事だ」

「それは隠した方が良いと思うぞ?」

 

※※※

 

「はあ……何で私がこんな……」

 

 余計洗濯物が増えた。

 ただでさえ旅行で両親がいないというのに、これじゃ私が過労死しそうだ。

 

「心配するな、既に厠に行っておいた」

「これで行ってなかったら私はお前をアホと評していた」

「ふっ……いざ参ろうか」

 

※※※

 

 さて、その前に着替え着替え。

 取り敢えず鏡に向かって、明日には一ミリくらい大きくなっていますようにと祈り、私はシャツの袖に手を通す。

 

「というか貴様……もう少しファッションに拘るべきではないか?」

「お前に言われたくねえよ」

「吾の忠告を無視するとは……裁きの雷が降ってきても知らんぞ」

「臭そうだな」

「い……いい加減忘れろ!」

 

 江代の行動にあきれ果てながら、私は準備を進めた。

 上着を纏い、靴を履き、いよいよ外へ。

 程よい涼しさだが、まだ夏は遠い。そんな感じだ。

 

「さて、車、電車、自家用ヘリコプター、自転車どれに乗ってバス停まで行く?」

 

 いや待て、このネタどっかで聞いた事あんぞ……。

 だが。

 

「え……あるのか? ヘリコプター。まさか収益で」

「貴様……本気で信じたのか?」

「やっぱりねえのかよ!」

 

 今度江代に何か奢ってほしいものだが。

 

「そういや全然聞いてなかったが、何でお前が超会議に?」

「ふっ……神が吾を呼んだのさ」

「神……?」

「吾が動画編集者という事を忘れたか? 吾が人気だから、特別ゲストとして出る事になったのだよ」

「え!?」

 

 ダメだ。私には分からない。

 江代って実は凄い奴なんじゃないかというイメージが、どんどん私に伝わってくる。

 

「何のイベント?」

「ふっ……それは秘密だ」

 

 そう言われると余計気になる。

 

※※※

 

 自転車に乗り駅に行き、新幹線に乗って数時間。

 到着したのは、東京駅。

 ロータリーの上をバスが通過し、その途中でドアが開き、降りる。

 すぐに私達を待ち構えていたのは、大きな入口と沢山の人だ。

 

「流石東京駅……ふっ、さてこのまま秋葉に

「もしもし江代さん。当初の目的忘れてますよ」

「そうだったな貧乳の銃士。吾はこの超会議で、闇の王になる……」

「いや何に参加するつもりなの!?」

 

 不敵な笑みを浮かべながら、江代がホームを出ようとした所で。

 私はふと気づく。

 

「あれ、てかお前イベント参加するなら私どうなるんだ?」

「心配するな。貴様は吾の友人という事で入れる」

「江代……」

 

 まさか江代がここまで優しい奴だなんて。

 私は心が暖かいよ……。

 

「しかし金はいただくぞ」

「前言撤回。お前は凄いケチだ」

 

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