第二十話 三姉妹の好み


「ねえねえ初ちゃん」

「なんだよ」

 

 ……眠い。理由は言えないが、かなり眠い。

 今の状況も、和泉が話しかけてきているくらいの事しか分からず、彼女の顔すらボヤけて見える。

 

「初ちゃんとか淀子ちゃん、江代ちゃんの好みのタイプを教えて!」

「はあ!?」

 

 今ので一気に視界が鮮明になった。

 

「あのさ、和泉。デリカシーって言葉分かる?」

「分かるよ!」

「なんで聞いたのかな?」

「じ、実はさ……」

 

 かくかくしかじか。

 

「なるほど。彼氏が欲しいけど、三人と被ったら大変だからと……」

「う、うん……」

「偉いぞ和泉」

「え?」

「お前は本当に運が良いし、しかも賢い! 私達を脅威と判断してくれるなんて!」

「え、ええ!?」

 

 私は感動した!

 和泉は、私の知ってる中で最もちゃんとしている奴だ!

 

「ご褒美に、ちゃんと好み教えてやる」

「う、うん!」

「まず姉さんなんだが、セ〇ゾのケン〇ィーが好きって言ってたぞ」

「あ、あの〇ャニーズの王子様キャラの人?」

「そう。ジャ〇ーズの王子様キャラ」

 

 一応言っておくと私は前々から、芸能人とかは苦手だ。

 別に私はブスではないが、姉さんみたいに美人ではない。

 どうしても芸能人と比べてしまう自分がいる。だから、芸能人とはチャンスがあってもお付き合いはしないだろう。

 

「じゃあ江代ちゃんは?」

「江代かあ……」

 

 一般人にあいつの好みをどう伝えたら良いんだろうか。

 大体あいつは……。

 

「ショタ」

「へ?」

「幼い顔とか可愛い顔の男の子好きなんだよ……あいつ」

「こ、怖い! ド〇ネーター持ってこないと!」

「待て和泉。流石にあいつが小学生に手を出したら私が止める」

 

 姉さんに向けたら犯罪係数どうなるんだろう。

 セーフティー解除されて木端微塵かな?

 

「じゃあ初ちゃんは?」

「え、私?」

「うん!」

「えー私かぁ……。んーと……えーっと!」

 

 答えられるわけねえだろ!?

 実は二次元だったり、バイト先のイケメンの先輩だったりとか!

 こいつもバイト先は一緒だけど、まだバレてないと信じたい!

 

「あ、あの……その……」

「ん~?」

「えっと、も……もういいや!」

「えっ、ちょっ、初ちゃん!?」

 

 バタン、という音が鳴った後――クラス全員が私と和泉に注目した。

 何を隠そう、私と和泉は今……。

 

 ――抱き合っていた。

 

「私、前から和泉の事好きだった! 私がレズだって思われたくなくて隠してたけど……私、和泉の事大好きなんだよ!」

「え……初ちゃ

「ぶちゅ~!!」

 

 馬鹿か私はああああああああああああッ!?

 和泉に二次オタなのと先輩の事バレたくないからって、ディープキスまでするか!?

 しかもキスしてる所に関してはクラス中の皆が引いているし!

 

「あ、初……」

「うぎゃあああああああああああッ!」

 

 バッドタイミングだ姉さんこのアマ!

 こんなシーンを覚えられたら、また一つ称号が追加されるだろ!

 

――例えば、『万年発情期処女の極み(レズ)ゴッド』とか!

 

「界〇拳みたいになるううううううッ!」

「はぁぁぁぁぁつぅぅぅぅぅぅ?」

「あ……」

「初~? 私を殴るとは良い度胸ね?」

「え……あの……」

「ただで逃がさないわよ? 『万年発情期処女の極み(レズ)ゴッド』?」

「ああああああああああッ! 言うなァァァァァッ!」

「くたばれぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 ぐしゃ。

 

「ああああああああああああああああああッ!!」

 

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