第十九話 生徒指導

あの校外学習のすぐ後、私と江代は一緒に生徒会室に呼ばれた。

 姉さんはちゃっかり免除されている。というか、あんだけ説教されたのに、目の前の副会長はこれから何の話をするつもりなのだろうか。

 あの時と同じことはもう二度と言われたくねえってのに。

 てか主に悪いのは姉さんとか二組のバカどもだし。

 

「さて、貴方達二人が何故呼ばれたか……分かっているわよね?」

「知りません」

「ふっ……知らんな」

 

 あーめんどくさい。

 てかね、忘れかけてる人もいるかもだがこの学校の大半は馬鹿で構成されている。

 人の話を聞かない奴だったり、支離滅裂な話題を繰り出してくる奴だったり、姉さんや江代(こいつら)みたいにツッコミきれない奴だったり。

 もうお分かりですね? もしかしたらこの副委員長は、とんでもない事を言う可能性があるという事だ。

 こう眼鏡のブリッジを上げて頭良さそうに振る舞ってはいるが……。

 

「まず浅井初さん、これが何だか分かりますね?」

「あ? 去年のテストの順位表じゃねえか」

 

 そこには一位浅井初、二位 六角美咲ろっかくみさき……とある。

 

「初さん、私の名前知ってます?」

「うん。これ見せてきて美咲じゃないって答えたらアホだよね?」

「認められないわよォォォォォォッ!!」

「は?」

「何で頭悪そうなあなたに! 私が! 負けなきゃいけないの!?」

「お前一回ミキサーで掻き混ぜてやろうか?」

「はあ!?」

 

 いや、逆恨みも良い所だ。

 てかさ、何度も言うようだけどこの学校って馬鹿の集まりなのよ。

 ここで好成績を取っていたからって、別に世間で褒められる事は絶対にない。

 

「次のテスト休みなさい休まなきゃ殺すわよ?」

「は? やだ」

 

 一応、大学に進学したい欲はある。いつかはあのバカ二人と別れて、東京かどっかの大学で自立したい。

 

「まあいい。他にも色々あるけど江代さんに話を聞きましょう」

「ふっ……吾を尋問しようとは。随分度胸があるな」

「度胸? 違うわ。私は昔から正義感が強いのよ」

 

 もしもし、次のテスト休めとか言った奴が何か抜かしてます。

 

「さて江代さん。貴方の罪はいくつかあるけど、まずはこれについて吐いてもらうわよ」

 

 そう言ってポケットから一枚の写真を取り出す美咲。

 

「これが何か分かる?」

「ふっ、吾の写真だな」

「これはナニをしているところ?」

「胸にメントスコーラをぶっ掛け

「何をしてくれとるんじゃああああああああああッ!」

 

 胸にメントスコーラ……? 尻の穴にメントスコーラぶっかける動画投稿した人は知ってるけど。

 

「風紀が乱れてしまうわ!」

「そもそもここに、風紀なんてあるのか?」

「初アンタは黙ってなさい」

「へいへい」

「江代さん、これについてどう思いますか?」

「吾は闇の住人に向けて動画配信も行っている。これくらい当たり前であろう?」

 

 いやそれXvi〇eoとかじゃなきゃダメな奴だろ。

 

「そもそも高校生で〇ーチューバーなんてやって良いと思ってんの!?」

「桐崎〇二を見てから語れ愚民。吾は貴様に屈しはしな

 

 ばこん。

 

「うわあああああああああんッ! ままァァァァァァァッ!」

「おいやめろ六角。江代泣くと中々泣き止まねえんだぞ!?」

「知らないわよ! 初、次はまたアンタよ!」

「はあ……今度はな……おい」

 

 美咲が次にどこからか取り出したのは、私のバッグ。

 そこには大人のおもちゃが……。

 

「これ、どういうつも

「それ馬鹿姉のせいだからなァァァァァァァァッ!?」

「あ、あの初さ

「うるっせえ! 今ここで撃ち殺したろか!?」

 

 エアガンの銃口を向けながら言う。

 

「す、すみません……」

「分かればよろしい。とっと解放してくんない?」

「いや、それはダメだ」

「あァ!?」

 

「貧乳の銃士……吾もそれに賛成だ。解放なんかしてもらったら、吾はこやつに従った事になる……。そのような事があってはならぬ……。我が魔術で、灰にしてやるッ!」

 

 そのまま木刀を抜く江代。

 対して美咲は金属バットを手にとった。

 

「おいおい! ちょっと待て!」

 

 このままガチ対戦が起きる前に止めないと……ッ!

 しかし。

 

「行くぞッ!」

 

 美咲はバッドを振りつつ進む。しかし江代は、先ほどまで泣いていた奴の動きとは思えない行動で、バッドを木刀で防いだ。

 そのまま乱舞を続ける美咲。江代は防戦一方である。

 

「おいおいおい……どうすんだこれ!」

 

 江代の戦闘力は一般人と大差ない。ここで倒しきれず、夜まで続く事もあり得る。

 

「何やってんるだ貧乳の銃士! 貴様も手伝え!」

「いや、やだよ!? 頼むからこれ以上無駄な争いをやめてくれぇぇぇぇぇッ!」

 

 しかもここでパロネタなんか出てきたらどう処理したら……ってあああッ!

 

「喰らえ、牙突・〇式!!」

 

 言ってる側からやりやがったあいつッ!

 木刀の切っ先が美咲に命中し、彼女は書類棚に背中をぶつける。

 そのまま棚からは書類が雨のようにどさどさと降り注ぐ。

 

「勝ったぞ貧乳。これで満足か?」

「満足じゃねえええええええッ!」

 

 いや、これどうするの?

 バレたら誰が悪い事にすればいいの!?

 

「取り敢えず貧乳の銃士。自首し

「嫌だァァァァァァッ!」

 

 この後まとめて二人で怒られた。

 

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