第九話 初VS淀子

さて、もう見えていた事だが……討伐隊のメンバーが全滅した。

 ヤムチャの死体みたいになってる奴が数名。ある者に至っては、脚に包丁が刺さっている。

 

「汚いから片付けてね。このボロクズたち」

 

 流石の姉さんも、敵をボロクズ扱いする始末。

 これに関しては、同意せざるを得ないが。

 

「初……仇を、淀子を倒せ……」

「いきなり無茶言い出したぞこいつ」

「あいつの妹なら、良い戦いが……出来るかも……知れない」

「いや無理だよ」

「勝って、くれ……」

 

 チーン……。

 

「死んだァァァァッ!!」

 

 いや確かに脚が包丁に刺さったら痛いだろうけど、死にはしねえだろ!

 

「それで、アンタまさか私を倒すつもりじゃないでしょうね?」

「いや、やらねえよ」

「立て! 立つんだ初!」

「〇ョーじゃねえよ!」

 あと立ってるよ!

 

「まあ良いわ。丁度体力が有り余っていた所よ! 体育前の準備運動に、アンタを倒す!」

「だからやらねえって言ってうわあああああああッ!」

 

 姉さんのドロップキック。私はそれを右に飛んで回避した。

 

「流石ね……じゃあこれはどう?」

 

 非常扉の裏側に回り込む姉さん。

 私は身構えて待機する。

 その次の瞬間。

 

 ――非常扉を盾にした姉さんが、私に襲い掛かってきた。

 

「非常扉でシールドアタックとかやめい!」

「ん? やだ!」

 

 非常扉を振り回しつつ言う。

 あんなの当たったら軽傷じゃ済まない。

 

「うわああッ!」

 

 姉さんが、壁をぶっ壊した。

 

「弁償しろよな!」

「ん? 無理」

「てめえェェェェェッ!」

 

 もうこの際壁破壊はどうでも良い。

 姉さんを止めなければ。

 

「封印してたアレを使うしかない!」

 

 ポケットから取り出したのは鉄球。

 当たるかどうかも、当たってダメージが入るかどうかも分からないが、投げるしかない!

 

「喰らえええええええええええッ!!」

 

 野球選手のように、私は鉄球を投げ飛ばした。

 しかし。

 

「あへ……?」

 

 鉄球の方から、ピキっと割れだした。

 ノーダメージならまだ許せるが、鉄球の方から割れるなんて予想外だ。

 

「どうした? 笑えよ初」

 

 こんなん〇ジータが見ても笑えねえよ!!

 姉さんは高く飛び上がる。そのまま非常扉を両手で掲げ、私の頭に振り下ろした。

 当然だが、私の意識は暗転した。

 

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