第八話 〇×女子高

学校。

 それは馬鹿姉妹に困らされている私にとって、唯一休める場――だと思ったら大間違いだ。

 クラスは違えど、学校が同じとか、そんな話ではない。

 何が言いたいかと言うと……ここの奴ら。

 

「ヒャッハーッ!」

「あぁぁぁ……煙草がうめえ……」

 

 末期状態なのだ。

 某漫画の〇K学園とかよりも酷い。

 主人公の周りがおかしな奴らとか、そんなレベルじゃない。

 

「……」

 

 とにかく、私はこのテンションについていけない。

 はっきり言って、陰キャにはキツい環境だろう。

 

「あ、初ちゃんおはよ~」

 

 まあでも、流石にこんな学校にも良心的な奴はいる。

 今話しかけてきた奴がそうだ。

 コイツの名前は和泉(いずみ)。この学校で、私が唯一友達と言える存在。

 私がこの学校に通えて、しかも精神的に死にかけていないのも、彼女の存在が大きい。

 

「初ちゃんどうしたの~?」

「なんでもねえよ」

 

 願わくば、彼女だけはこいつらに毒されて欲しくない。

 

「はい静かに」

 

 教師が教室に。しかし、この教師も煙草を吸っている。

 恐らくだが女にはヤニを吸って欲しくない男は、この高校の生徒と付き合うべきではないだろう。

 

※※※

 

 長いホームルームが終わり、授業を受け、昼休み。

 最近二組では、流行っている遊びがある。

 

「おいお前ら、今日もあれ始めるぞ!」

 

 教壇の上に立つ女子生徒。

 

「さーて……今日のチャレンジャーは誰だ!?」

 

 呼びかけに対し、手を挙げたのは六人。いつもの面子三人と、新入りが三人。ゆっくりではあるが、少しずつ挑戦者は増えている。

 これから何が始まるかを知っている私は、かなり不安だが。

 

「じゃあ毎回の事だが討伐会議を始めるぞ。私はティア子。職業は、気持ち的に女子高生やってます」

 

 気持ち的どころか現在進行形で女子高生だろ。

 

「皆聞いてくれ。今日は倒せた奴に、これを渡そうと思う」

 

 ティア子(一応言い忘れたが偽名だ)が取り出したのは、私も大好きな高級プリン。

 そう、この前江代に顔面シュートされたプリンである。

 

「この前負けた者の為にも、今回は勝たなきゃならない。そうだろ? 皆!」

 

 真面目に聞いてくると馬鹿らしくなる会議はまだ続く。

 

「ちょー待ってんか!」

 

 次に教壇に上がったのは、三白眼に茶髪の生徒だ。

 

「ワイはキ〇オウ」

 やめろ馬鹿。

 

「取り敢えず異論はないね」

「なんでや!」

 無視されてしまった。

 

 その後は挑戦者以外強制参加のイベント。

 どの挑戦者が討伐に貢献するかを、現金で賭ける。勿論完全なる違法行為だ。

 

「初ちゃん楽しみだね~」

「ウンソウダネ」

 私は楽しくねえよ。

 

 だって今回の挑戦者。

 

 ――武器がおかしいんだよ。

 

 これを読んでるお前らも、これを聞けば私の言いたい事が分かる。

 右から、

『おもちゃの剣(十回刺さないと敵が死なない設定があるらしい)』

『包丁』

『包丁』

『おもちゃの刀』

『木刀』

『金属バット』

 

 結論から言えば……こんなもんでこれから戦う相手を倒せるわけがない。

 詰まる所、誰に賭けても同じなのだから賭けなんてクソ喰らえだ。

 

「おーい初、早く投票しろ」

「嫌だ」

「早く」

「殴って良いか?」

「ひいっ!」

 

 姉さんの真似をした私にビビるような奴らだ。絶対に勝てない。

 

 さて、もうここまでの会話で大体の方は察しただろう。こいつらが倒したい相手というのは……。

 

 ――姉さんの事だ。

 

「~♪」

 

 もう挑戦者は教室を出て、鼻歌を歌いながら一組を出る姉さんを見つめている。

 やる気満々である。

 そのままリーダー格の女子が指を差し、

 

「攻撃、開始ィィィィィッ!」

 

 絶対に勝てない戦が、幕を開けた。

 まずは包丁二人衆。まず姉さんを無力化するつもりで襲い掛ったのだろう。

 しかしそんなものは通用しない。

 

「ほわちょォォォォッ!」

「ぐわあああああッ!」

 

 姉さんの回し蹴りが、包丁使い二人を同時に無力化させた。

 そのまま包丁を手に取り、金属バット使いの足に投げる。

「あああああああああああッ!」

 グサ……という音の後に響く絶叫。

「大丈夫かなあ……」

 

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