第二話 長女・浅井淀子の生態

「すんませんでしたあああああああああ!!」

「ごめーん♪ やっちゃったわ」

 

 そこには、地獄があった。

 十人の男の中心に、茶髪赤眼の美少女が立っている。

 ――少々血塗れで。

 

「そんなわけで、お金頂戴♪」

 

 認めたくないが、こいつは私の姉だ。

 

「ふ、ふざけんな!! もう金なんてァァァァァァァッ!!」

「ちょ・う・だい?」

「は、はひいいいいいいい!!」

 

※※※

 

 私の姉・浅井淀子は厄介な人間だ。

 まず、どこに力を隠しているのか分からないくらい強い点。

 さっきも男子高校生十人を一人で制していた。相手にはナイフや鉄パイプ持ちもいたというのに。

 他にも面倒くさい所はある。

 

「あ、初。あれ見て、ラ〇ュタが来そうな予感」

 

 確かに今、空には積乱雲が浮かんでいた。しかしなあ……。

 

「高二女子が雲見てラピュタとかやばくねえか?」

 

 私の指摘の後、姉さんが即座に振り向く。

 

「じゃあ聞くけど、高二女子で処女ってやばくない?」

「おめえも処女だろうがああッ!」

「あと街中で大声出すのやばくない?」

 あ、しまった。処女とか口に出してたわ恥ずかしいい!

「あと処女ってワードを恥ずかしいと思う事自体やばくない?」

「あと言われてから急に冷静になるのやばくない?」

「あとブラウス一枚でブラ着けてないってやばくない?」

「なんで着けないの? 貧乳だから? それとも純情なフリしてビッチだったの?」

 

 ……。

 

「あ、ごめん。ひょっとしてアンタ、モテると思って……」

「もうしゃべんなお前!!」

 

 姉さんには勝てない。

 

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