青年期
第14話 再会
それから、約10年もの月日が流れた。
とある駅のロータリーに1人の男性がいる。爽やかな笑顔を浮かべていて、成人男性というよりは青年に見える。彼は軽やかに歩き、止まっているタクシーの窓を4回ノックした。ドアを開けて入り、運転手に1枚のメモ用紙を渡した。
「この住所までお願いします」
運転手はメモされた住所と乗客の顔を交互に見て、こう訊いた。
「ひょっとして、マイク?」
「おぅ。ルイスか。久し振りだな」
「久し振り。全然変わってないね」
男性――マイクは、あの頃と何も変わっていない。一方、運転手――ルイスは、立派な青年となっていた。
発車してしばらくして、マイクは口を開いた。
「ごめんな、ルイス。あんなこと言って、孤独にさせて……。謝りきれないよ」
「もう終わったことだから気にしてないよ」
申し訳なさそうな顔で謝るマイクに、ルイスは前を向いたまま優しく言った。
「俺さ、夢なんて描いたことないんだ。だから、羨ましくてついひどいこと言っちまった」
「分かってる。あれは事実だったし、マイクが夢を応援してくれたこと、忘れてないから。――これからも忘れないから」
ルイスは後ろを向こうともせずに、強く言った。
「ありがとう。俺が訊く権利ないだろうけど。――ルイスは俺がいなくなってから今までどうやって生きてきたんだ?」
「独りになってから――どうすればいいのか分からなくて、行くあてもなく歩いてた。そうしたら、リズっていう同年代の子に拾ってもらえて。リズとそのお父さんの家に住まわせてもらってた。それから何年かして、リズのお父さんに将来の夢のことを話したら反対されて……。その家を出てきた。そこからいろいろあったけど、夢を叶えられたからこれで良かったと思ってる。僕の人生だからね。――マイクは? あれからどこで何してたの?」
ルイスの淡々とした話し方は当時と変わっていない。しかし、“僕の人生”が強調されていて、マイクは爽やかに微笑んだ。
「あれから、俺は――正門でも東門でもない別の門から従業員を避難させてたんだ。と言っても、ごく一部――8人くらいだけど。少しでも多くの従業員を心から笑顔にしたいって思ってさ」
マイクも自分と同じことを考えていたと知ったルイスは嬉しそうな声でこう言った。
「ごめんマイク。やっぱりマイクはいい人だった」
「“やっぱり”ってなんかひどいな」
2人の笑い声が車内に響いた。
「目的地に着きましたよ」
事務的な声でルイスはそう言った。窓の外には、
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