第7話 裏口
「寮に裏口なんてあったんだね……」
「あぁ。
マイクは、作業着の胸ポケットに
「持ってたっけ、そのピン」
「寮に隠しておいたんだ。裏口の扉は中からも外からも鍵がかかっている。だから、これで開ける。こう見えてピッキングは得意だからね」
マイクはしゃがんで鍵穴に目線を合わせる。それからしばらくしても、寮の一角にカチャリカチャリという小さな音が響くだけで、開きそうにない。多少なりとも焦り始めたルイスは、マイクに訊いた。
「前回はどうやったんだ?」
「ピーターが開けてくれた。あいつは、ピッキングの天才だからな。このピンをくれたのもあいつだ。今までお守りとして大切に持ってた」
ずっと机の引き出しの奥に隠していたテストの0点の答案用紙を母親に見つけられてしまった子供のような顔でマイクは答えた。
「マイクがピッキング得意っていうのは?」
「……嘘です。ごめんなさい」
テストを我が子の眼前に突き付けて問いただす母親ルイスと
「何でそんなことすんの? 焦ったんだけど」
「あの時のピーターがかっこよく見えて……。俺もああなりたいと……」
なおも問いただす母親と、更に深く頭を垂れる子供。
「かっこつけたかったのか。それは分かった――ことにするよ。どうしよう、これ?」
溜息を
「壊していい?」
「……どうぞご自由に。僕は責任取らないけど」
ガシャッ、バキッ、メキャッ、ポロ。
ルイスが再び溜息を
ガチャリ。
「開いたよ」
錆びれた鉄の扉を壊して開け、爽やかな笑顔のマイク。それを見たルイスは無意識にこう呟いていた。
「かっこよ」
と。
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