生物多様性

 生物多様性の保護。地球温暖化同様に、これもまた森林の保護が鍵ではないだろうか[1,2]。特に[2]は面白い。樹冠の閉じていない明るい人工林は豊かな下草が茂り、それを餌とする鹿が増える。樹冠が閉じると下草が減り、増えた鹿が里山に降りてくる。実に出来すぎたストーリーだ。


 よし、鹿について考えよう。田畑を荒らす害獣としてみなされる動物。彼らが増えたのは、天敵たる狼が絶滅したからだ。食物連鎖の頂点たる狼。それに襲われる恐怖に駆られた人間が滅ぼしたのだ。そして今、人間が狼のポジションで鹿を撃ち殺している。皮肉なものだ。


 だが、鹿の繁殖力はあまりに旺盛だ。一部の高山植物は鹿たちに食い荒らされ、そこを住処とする昆虫たちも姿を消した。一度バランスが崩れると、それはドミノのように連鎖していくのだ。


 生態系のバランスを崩す要因として、林道が挙げられる[3]。食物連鎖のピラミッドの頂点は広い最下層によって支えられるが、林道はその最下層を真っ二つにぶった切る。二つに割れたピラミッドは最上部を支えられず、頂点たる狼や熊、鷹などが獲物を求めて人間の生活圏内に進出する。そして滅びる。鹿が増える。


 日本の生態系がいかに絶妙なバランスを保って来ていたかが見て取れるようだ。いや、日本に限らず地球全体に言えることだろう。人間はその営みに可能な限り距離を置くべきだったのだ。


 放射線汚染で立ち入り禁止となったチェルノブイリが動物たちの楽園になっているそうだ[4]。人間は動物たちにとって、放射線より害悪なのだ。


 というわけで、解決策として人間はアーコロジーでコンパクトに居住し、生態系と隔絶した生活を送るのはどうだろうか。


[1]国立環境研究所:森林破壊が野生生物種の減少に及ぼす影響の機構に関する研究

https://www.nies.go.jp/kanko/news/12/12-5/12-5-05.html


[2]森林総合研究所:ミニ講演会資料

http://www.ffpri-skk.affrc.go.jp/sm/sm7/sm7%207.pdf


[3]土木技術総合研究所:道路工事の考え方

http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0906pdf/ks090605.pdf


[4] ナショナルジオグラフィック:事故から30年、チェルノブイリが動物の楽園に

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/042100148/

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