5th story
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リツから毎日、電話やLINEはあるけれど忙しいようでなかなかゆっくり話せない。だから、夫のことはまだ話せないでいた。
「おつかれ」
「おつかれー」
「そっちはどう?」
「うん、変わりないよ。そっちは?」
「うーん、やっぱり立て込んでる。来月末くらいにならないと帰れないかも」
「そっか」
「だからさ、ココさんもこっち来れば?お休み入るでしょ?」
そうか、それもアリかも。LAには会いたい人もいる。
「そうだね、少し長めにお休み取って行こうかな?」
「いいね、準備出来たら連絡して」
お盆休みから8月いっぱい休むことにして、リツと一緒に戻れるように手配した。LAは何年振りだろう?学生時代からの親友が住んでいる。
空港に降り立つと、懐かしい笑顔が見えた。
「ココー!久しぶり!」
「さくら!久しぶり!」
さくらと私は大学の同級生。
さくらに会うと、一気に時間が巻き戻る。
私達は女子大生みたいにキャピキャピ喜び合った。
それからリツと合流して、夕飯はさくらのお宅でご馳走になる。
「初めまして、リツです」
お互いのパートナーが挨拶し合う図が、こんなに面白い事ってあるだろうか?
名前が一緒だし、なんだかこの二人、似てる。兄弟みたい。
「子供達は?」
「サマーキャンプなの。来週には戻るから、また来て。みんな会いたがってる」
ここの子供達はみんな可愛くて大好きだ。
うちの子達もよく一緒に遊んだ。飾ってある写真を見ながら、成長に驚く。
私とさくらはアイランドキッチンで夕飯の準備をして、Wリツは飲みながら話してるけど、まだぎこちない。
さくらがクスクス笑いながら言う。
「私達、昔から好みが似てるよね」
「そーそー!藤木くんを最初に連れてきたのは私だったのに、さくらの方が夢中になっちゃって」
藤木くんはさくらの亡くなったご主人。
私とバイト先が一緒で、大学も一緒だと知って昼休みにランチに誘ったのだ。それが二人の出逢い。
「それを言うなら、タツヤさんをサークルに誘ったのは私だったのに、ココが持って行っちゃったんじゃない」
タツヤは私の夫だ。
さくらが行った学内の飲み会で知り合って、サークルに誘ったのだ。私は夫とそこで出逢った。
「そう言えば、佐藤くんは元気?」
「うん、元気だよ。社長として頑張ってる。この前上場したんだよ」
「やるねー!株買っちゃお」
佐藤くんも私達の同級生。
藤木くんの会社で一緒に働いていて、藤木くん亡き後を継いでいる。
「タツヤさんは元気?会ってるの?」
「うん、この前会ったよ。まぁ、元気かな」
「えっ?」
あ、地雷踏んだ……
後ろでリツが聞いていた。
フリーズしてる。
まだ話してなかったんだった。
さくらがニヤニヤしながら言う。
「不誠実な事はしちゃダメよー」
あんたにだけは言われたくないわ。
「ちょっと話してくる」
私はリツの手を引いて外へ出た。
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