33
翌日
夫は仕事帰りに彼と話し合うから、夕飯はいらないと言って家を出た。しばらくはこの家にいるつもりのようだ。
私達は1年も会わなかったのがまるで嘘のように違和感がなかった。今朝なんて、別居する前のいつもの朝と全く変わらなかった。
さあ、今日こそ掃除だ。
「ココさん、そっちはどう?」
リツからラインが来る。
「変わらないよ」
とりあえず、夫のことは落ち着いてから話そう。
「今日はアオイさんとサッカーだよ」
ユニフォーム姿の二人の画像が送られてくる。
「怪我に気をつけて」
「寂しい?」
「リツは寂しいの?」
「店を出た瞬間から寂しい」
「それは大変だね」
「なんだよ!余裕ぶって!」
「早く帰ってね」
「うん」
やっぱりリツは可愛い。
夫が帰って、結果を報告してくれた。
「入院は終わりにして、彼の自宅に戻ることにしたよ」
「そうなのね…」
「これからは痛み止めだけになるから、多分体調も落ち着くだろうし、きっとおだやかに過ごせると思う」
「そうね、カレーも作ってあげられるね」
「そうだね」
夫は寂しいような、嬉しいような、複雑な顔で微笑んだ。
治療をしないということは、回復は見込めないということだ。だけど、家に戻ったら元気になったという人もいる。『望みは捨てない』そう夫は言った。
「じゃあね」
「ああ、本当にありがとう」
「うん、また連絡して」
「うん、連絡する」
彼が退院するまでしばらくこの家で過ごした夫は、出る時には吹っ切れたのか、晴れ晴れした顔だった。また彼と一緒に過ごせるのが嬉しいのだろう。
それから暫くして、夫からラインが来た。
「調子、いいです」
麗しい金髪の『超』が付くほどのイケメン。
彼は外国人だったのか……。
そして投資家でお金持ち。
夫は全世界の女性を敵に回している。
違うな、全世界のゲイか。
手前味噌だが、夫もなかなかのイケメンだ。
この画像、かなり眼福だな。
待ち受けにしようかな。
リツがフリーズしちゃうけど。
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