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「うーん、やっぱりカレーかな?キミのカレーは本当に美味しいからなぁ」
「あら、そんなこと言ってくれるなんて嬉しい」
私達は別居するまでも仲が悪かった訳ではない。むしろ良かったと思う。三男が家を出てからの2年ほどが、初めての二人きりの生活だった。私達は結婚してすぐに子供を授かったので、二人だけの新婚生活というのがほとんど無かった。だから、その生活は新鮮で、二人で出掛けることもよくあった。
「ねぇ、向こうでは食事はどうしてるの?」
「自炊だよ」
「えー!信じられない!お米も炊けなかったのに!」
「だから苦労したよ。それに反省した。キミに感謝はしていたけど、家に帰れば美味しいご飯が食べられることが、どれだけ有難いことか全然認識が甘かったと思う」
「美味しいって言わなかったよね」
「うん、ごめんね。でもいつも美味しいと思っていたよ」
夫は仕事人間だ。家事は一切しないし、食事の時も仕事のことで上の空なんてしょっちゅうだった。その代わり文句も言わない。全部キレイに食べるのが夫の『美味しかった』なのだ。
「うん、知ってる」
私達はカートにジャガイモやニンジンを積み込んで、カレーの材料を揃えていった。
「今日はキミに美味しいカレーの作り方を教えてもらわなくちゃ」
「彼はカレーが好きなの?」
「うん、大好物なんだ」
そう言って、夫は恥ずかしそうに笑った。
もう、そんな可愛い顔しないでよ。
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