35 Blue Velvet

庭では花々が咲き誇り

甘い香りを漂わせていた。



「夫が自宅に来たんだ。彼の恋人が癌で、あまり良くないみたいなの。それで相談に来たの。私は家族として彼を支えたいし、出来る限りのことはしたいと思う。リツが心配するようなことはないから、信じてくれる?」


「自宅に泊まったの?」


「うん」


「何も…無かったよね?」


「あのね……彼、今はゲイなの」


リツには知らせると許可は取ってある。


「……え?」


「今の恋人は男性なのよ」


私は二人の画像を見せた。


「……どういうこと?」


「目覚めちゃったみたい」



とにかく今はさくらの家だし、帰ってちゃんと話すということでなんとか落ち着いた。



リビングに戻ると食事の準備が出来ていた。

私達は思出話に花を咲かせた。Wリツはやっぱり気が合うようで、音楽や仕事の話で盛り上がっていた。サッカーにも誘ったみたい。


満月が優しく輝く、いい夜だった。





遅くにリツの自宅へ戻った。

かなり酔っぱらってるなー。話は今日は無理ね。

シャワーを浴びてベッドへ。

リツがシャワーを浴びている間に今日撮った画像を見返す。Wリツ、ウケる。


シャワーから戻ったリツが、そのまま襲いかかって来た。


「ちょっと!何!」


「もうムリ。まだ待てとか言うのか!?」


そんなに焦らなくても


「リツ、浮気してないの?」


「するワケないだろ!?」


そんな律儀な男だったかな?


「ココさんしてるの?!」


「してません」


「ホントに?怪しい!?」


「ホントです」


「なんで敬語なの?」


リツ、やっぱり可愛い。


「ホントだよ。確かめてみて」



首筋からゆっくり味わうように降りてゆく


爪先までいくと、今度は後ろ


隅々までキスして戻ってくる


深く受け入れて、抱きしめる


「……あ…っ」


昇りつめてゆくと

ブルーベルベットが見えるようになった

思っていた質感とは少し違う

獣の皮毛のようなものではなく

どちらかといえば蝶の鱗粉のような

限りなく黒に近い

深い碧

蝶が羽ばたく時の煌めきのように

波打つあいまに玉虫色の煌めきが覗く

その煌めきがたかみへといざな

煌めきを見たくて追いかける

碧い闇の中を

彷徨さまよ






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