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なんだか、心と体が分離したみたいだ。
リツに説明しようとすると、涙が溢れて声が出ない。体が言ってる『もう限界』
「…ちょっと……待って」
そう言うのが精一杯だった。
「大丈夫?」
「……うん」
私は寝室へ籠った。
暫く泣いて、蓋が外れた自分の気持ちの中を探ってみた。
悲しいのか?
寂しいのか?
寂しい。何が寂しいんだろう?
もう、あの家に家族が誰も居なくなってしまったこと。全部が過去のことになってしまったようで寂しい。二度と戻らない時間が私の心に穴を開ける。埋めようのない穴。
でもそれは遅かれ早かれやって来ることだった。気持ちでは繋がっていても、いつも触れられる距離にいた家族がみんなバラバラになってしまう。
だけど──
今はバラバラでも、人生は長い。
子供達もこちらで仕事をすることになれば帰るかもしれないし、夫だって、お相手と上手くいかなければ帰ってくるかもしれない。長いスパンで考えれば、人生の中のヒトコマ。山もあれば谷もあるんだ。
悲しい。何が悲しいんだろう?
夫が私を選ばなくなったこと?
私は夫を愛している。結婚すればパートナー以外への恋愛感情が無くなるように出来ていればいいのだけれど、人間はそんなふうには出来ていない。恋の対象が私でないことは悲しいけど、そこでジタバタしたってもう手遅れだ。傷つけ合うくらいなら、申し出を受け入れたほうがいい。お互いに愛していることに変わりはないのだから。それに、気持ちに蓋をしていただけで、私のほうが先に
私がリツに対しての気持ちに蓋を出来たのは、まだ余裕があったからだ。余裕なく、一瞬で落ちる場合もあるし、気がついたら落ちていたということもある。それは自分でコントロール出来るものではない。走り出してしまったら、誰にも止められない。今回は夫がそうなったけど、私だっていつそうなるか分からない。
恋は落ちるもの
恋がしたいという夫の気持ちに共感してしまった。
私は恋がしたいんだ。リツと。
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