25

スマホの着信で目が覚めた。


「母さん、おはよ」


「ハルマ?おはよ」


「俺、もう店出たから鍵かけて」


「早いね」


「友達と約束あるから。リツさんによろしく」


ホントかな?末っ子は空気を読むのが上手い。物分かりが良すぎるのもちょっと心配だったりする。


「そうか、気をつけてね」






朝食の用意をしていると、ソファからリツが起きてきた。


「おはよ……ハルマは?」


「帰ったよ。リツによろしくって」


「ハルマ、ほんと可愛いな。弟みたい」


「仲良くなってくれて良かった」




二人で朝食の片付けをする。


「今日は旦那さんは何時に帰るの?」


ちゃんと、話さなきゃね。


「もう、帰らないんだ」





……何これ?





私の手に水滴がポツポツ落ちる。




そんなつもりはないのに。

むしろ夫が私に正直に話してくれて、愛していること、家族でいたいと言ってくれたことは嬉しかったのに。

自分の口から出た途端に、別居ソレは私の中で現実になった。




蓋を閉めきれなかった。

やっぱり悲しかったんだ、私。






リツは黙って抱きしめてくれた。

ああ、嫌だな。

泣いて気を引く女みたいだ。

それに、夫がいなくなったからすぐにリツに乗り換えたみたいに思われたら嫌だな。

この複雑な状況を、どう説明しようか?


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