4th story

Coco

29

あの後、お店はついにリツの常宿になってしまった。関係を持つことで変わってしまうのが怖かったけど、私達はビックリするほど変わらなかった。リツは相変わらず日本とLAを行き来していて、最近は日本に居ることが増えている。親日家のヨーロッパのプロデューサーと仕事をしていて、日本で落ち合って仕事をしているみたいだ。あれから一年、私達は問題なく過ごしていた。



「来週からまた戻らないと」


「そうなんだ。じゃあ、私も自宅に戻る」


「家はどうするの?」


「そうね…あの子達が戻ってきた時に必要だから、処分はしないってことにしてたけど、どうなんだろ?」


「旦那さんのほうは上手くいってるの?」


「うん、仲良くやってるみたい」


「そっか。それは良かった」


私と夫はたまに連絡を取り合っている。

家族のことやその他日常的なことで連絡が必要な時に、お互いの近況も聞いたりした。





リツを送り出して自宅に戻り、窓を全部開けて換気をする。さぁ、まずは掃除だ。




ガチャ




玄関が開く音がした。




え?鍵はかけたはずだけど…恐る恐る覗いてみると





夫が立っていた。





「どうしたの?何か荷物?」


久しぶりに見る夫は、少し雰囲気が変わっていた。以前はバリッとスーツを着こなす感じだったけど、なんだか元気がない。仕事、休んだのかな?



「……」



「何かあった?とにかく、入って」


私は夫の背中を支えながら家に入れた。

夫は泣いていた。

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