2nd story

11 Coco

ふうっ、今日は忙しかった!

飲むヒマもなかったな。


私は片付けながら、夜のうちに車で帰ろうと決めた。いつもなら飲んでいるから店に泊まって翌日帰るのだけど、今日はシラフだし運転できる。


ビルから出て駐車場まで歩いている時。

前からフラフラと酔っぱらいがやってきた。


「ねぇ、お姉さん!」


前に立ち塞がる。ヤバいな…無視してやり過ごそう。

私が男を避けて通りすぎようとすると


「どこ行くの?」


手首を強く捕まれた。


「痛いっ」


『ドンッ』


私はそのままビルの壁に押し付けられた。


「ぐふ……」


酒臭い息が顔にかかる。


「やめてーーーーーーーーーーっ!」


場所は眠らない街。繁華街のど真ん中。

私の悲鳴を聞いて周りの人が振り替える。


「何やってんだ!」


何人もの人が男を取り押さえてくれて、私は助かった。

そのまま警察で事情聴取。結局、疲れて眠くなり帰れなかった。酔いが覚めた酔っぱらいは、土下座して謝っていた。ほんとに酔っぱらいって、自分が一番偉いと思っちゃうんだよね。不思議。

ひと眠りした後、私は捕まれた手首がアザになり、痛くて病院へ行った。




「あれ?ココさん?」


「あら、トール。久しぶり」


トールはリツのバンドメンバー。

久しぶりに会った彼は足を引きずっていた。


「怪我したの?」


「うん。サッカーでやっちまった」


「あーあ、大丈夫?」


「うん、大したことはないよ」


「ココさんは、その手首どうしたの?」


「昨日さ…」


昨夜の出来事をそのまま話した。

話していると、なんか実感が沸いてきてすごく怖くなってきた。


「すげー危なかったじゃん!怖いなー」


「うん、怖いよね」


「今度から、夜帰るのは止めたら?」


「そうだね、そうする」


お互いお大事にといたわりあって、トールは帰って行った。私は診察を受けて、湿布を貼り包帯を巻いてもらった。幸い骨などに異常はなく、しばらく湿布していれば治るようで良かった。でも、料理は痛くて出来ないかも…。そう思いながら病院を出た。



「ココさん!いま何処?」


「え?病院出たところだけど?」


「すぐ行くから!」


「え?なんで?」


「だって、襲われたって…」


トールか。


「大丈夫だよ。怪我も大したことなかったし」


「とにかく行くから!」


そう言うと、リツは電話を切ってしまった。

……店に戻るか。

帰れないじゃないか。

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