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ココさんがさりげなくギターを積み込んでいる。歌わせる気だな。はいはい、歌ってあげますよ。
海に着くまでいろんな曲を聴いた。車内はFes状態だ。俺とアオイさんはテイストがちょっと違うから、聴いている曲もちょっと違ってすごく刺激になった。アオイさんはギタリストだからインストをよく聴いていて、民族音楽もいろいろ聴いているみたいだった。俺も最近、そっち方面に興味があったからいい勉強になった。
海に着いてランチの後、暫くしてアオイさんがギターを弾きはじめた。アオイさんのインストの曲。この曲好きだ。ココさんのリストにも入ってたな。
次は…これ、聞いたことあるな。TUNAMIだ。湘南だからね。尊敬する大先輩に敬意を込めて歌う。
「ココさん、撮ってる?」
「撮ってるよー」
抜かりナシ。
アオイさんが音を探り始めた。
なんかいい感じのメロディだなぁ。ウォーミングアップも出来たし、合わせるか。さすがアオイさん、分かってるな。俺は実はロックよりカントリーのほうが合うんだよ。
「いいねー、そのメロディ」
ちょっと切なく甘いスローなメロディ。
歌詞はまだ付けられないからホニャラで歌って、ナンダカンダでするすると出来てしまった。
「じゃあ、通してやってみよう。撮ってる?」
「撮ってるよー」
「なんで後ろから?」
「二人が仲良く作曲してるのを邪魔したくないから」
海を眺めながら、気持ちよく歌う。
アオイさんも気持ち良さそうに弾いてる。
この曲気持ちいい。
次のアルバムに入れたいな。
「泳ぎてー。着替え持ってくれば良かった」
「足だけ入る」
ココさんはそう言ってサンダルを脱いで砂浜を歩いた。
「裸足気持ちいいよ」
海はまだ汚れていなくて、少し冷たい。
三人で浜辺に座って、海を眺める。
海以外何も見えなくて、波の音しかしない。
三色の光が重なりあうと、透明になるのと同じように
俺達は景色に溶けた。
誰も喋らないけど、心地いい。
ゆったりとした時間だけが流れる──
いつまでもこうしていたい。
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