6
アオイさんは丁寧に食器を拭いてくれて、リツは手際よくサンドの具材を準備している。キッチンにイケメンが二人並ぶって、なかなかいい眺めじゃないの。
「あ、せっかくだから写真撮って。インスタ上げよ」
「アオイさん、残念。この店インスタ禁止だから。その前に撮影禁止」
「そうなの?」
「店が身バレしちゃうと業界が大混乱に陥る」
「そうか…じゃあ、ココさんと出掛けるのは?俺達といると撮られるかもしれないよ?あることないこと書かれるし」
「大丈夫。ココさんは透明マントだから」
「人をひみつ道具みたいに言わないで」
「透明マント?」
「ココさんのことも週刊誌は書けないんだよ。あの人達も店が無くなると困るから。暗黙のルール」
「なんて便利なんだ」
「だから人を道具のように言わないで」
「じゃあ、気にせずのびのび遊べるワケだ」
「そうそう。海に着いたらインスタ上げましょうよ」
リツは次々サンドを仕上げてゆく。それをアオイさんがBOXに詰める。リツは若い頃から飲食店でバイトしながらバンドをやって成り上がってきた。料理は一通り出来るから、お店を手伝ってくれることもある。
「さてとー、行きますか!」
「行き先は?」
「湘南!」
やっぱりかー。遠いよ…。
「さぁ、ココさんのリストはどうなってる?」
勝手に私のスマホからbluetoothで音楽ファイルを飛ばす。なんで操作法を知ってるんだ。
http://www.youtube.com/watch?v=4DfF6-
wYZJw
http://www.youtube.com/watch?v=87gWaABqGYs
「この曲いいよね!俺も好き」
「いいね、この曲」
「お?アオイさんのも俺のも、ちゃんと入ってるよー!やるね商売上手」
「そーいうんじゃないから」
「アオイさん、最近どんなの聴いてます?」
「リツくんの曲、入ってるよ」
「あざーす!」
「俺のもアオイさんの入ってますよ」
「どの曲?」
ドライブの間、音楽談義に花が咲く。いいねー、化学反応起きそう。
海岸線に沿った長い一本道。
窓もルーフも全開にしてボリュームも上げてぶっ飛ばす。
「イエーーーーーーーーーーーーーーッ!」
「フォーーーーーーーーーーーーーーッ!」
ルーフからタトゥだらけの上半身を出して騒ぐ大人。服着なさい。
「気持っちいーーーーーーーーーーーッ!」
「あー、コンタクト乾く」
とりあえず座りなさい。
「アオイさん、体仕上がってますねー」
「最近、ハマってるんだよね」
二人とも鍛えてるからすぐ脱ぎたがる。
「らーらーらーららら らーらーらー♪」
湘南と言えばサザンの世代です(ココ)
「紅白良かったよね。感動した!」
「40年以上前のデビュー曲だよ?それであんだけ盛り上がるってほんとスゲーわ」
三人で大声で歌いながら走る。
こらー窓から足を出すな!
浜辺でランチ。サーモンとクリームチーズにレタスとレモン。もう一つはローストビーフにクレソンとグレービーソース。私のはどちらもオニオン抜き。
「サンドサイコー」
「うん、旨い」
「天気もいいし、気持ちいいね」
冷たいアイスティーを飲みながら暫くまったりした後、アオイさんがギターを持ち出した。もちろん積んできたよ。このために来たんだからさ。
さぁ、どんな曲が生まれるか?
私は少し離れて、後ろからこっそり動画を撮影した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます