5

「おはよ…」


リツはぐーっと伸びをしながら起きてきた。


「おはよ。ご飯出来るから顔洗ってきて」


リツがバスルームへ向かう途中でアオイさんが風呂から戻ってきた。


「あっ、アレ?アオイ…さんですか?」


「あ、はい、アオイです。リツ…くん?」


「はい、そうです。初めまして」


なんかギコチナイ挨拶を交わして、二人は握手した。


「ご飯出来ますよ」


「やったー!いい匂いだ」


アオイさんはカウンターから覗き込んで、朝ごはんが出てくるのを待っている。

焼き鮭、豆腐のお味噌汁、ほうれん草のお浸し、だし巻き玉子、のり。民宿の朝ごはんだね。


「納豆いる人」


「ハイ!」


リツが元気よく手を挙げる。

アオイさんはダメなんだね。私もダメ。

一緒に食事して大丈夫かしら?一応、ニオイしないやつだけど。


「この朝飯サイコーだわー。常宿にしたい!」


アオイさんがご飯を頬張りながら言う。


「ですよね!俺もそう言ってるんですよ」


リツが納豆をまぜながら乗っかる。


「宿じゃないですよ。たまにならいいけど、常宿はムリ」


「お店の他に宿も経営するとかどう?」


「んー…情熱ナシ」


そんな事したら、お店出来なくなりそう。きっと今より大変だ。木、金、土曜日の夜だけ営業。あとは場所だけ提供したり、昼間はベビーシッターしたり、そういうユルイ感じがちょうど良いのだ。平日は自宅で主婦もしてるしね。


「ココさん、今日は俺offなんだ」


あ、嫌な予感がする…


「俺もoffだ」


「じゃあ一緒に行きましょうよ、ドライブ!」


やっぱりー。


「また私に運転させる気でしょ!」


「だって、ドライブ連れてってくれるのココさんしかいないんだもん」


「なんで?リツ、友達いっぱい居るじゃない」


「みんな免許持ってないんだよ。持ってる人はだいたい所帯持ちで昼間は会えません」


出たよー、若者の車離れ。

なんだその不倫の彼女みたいなセリフは。


「俺も行きたいなー」


「アオイさん運転は?」


「運転出来るけど免許ナシ」


どういうこと?


「ねー、お願い」


リツが可愛くお願いする。仔犬系め。


「もー。じゃあ、お弁当作って」


結局、甘いんだから私。


「御意」


「お弁当も持って行くの?いいねぇ、楽しそう」



アオイさんも行きたいみたいだし、まあいっか。この二人がどんな化学反応起こすか見てみたいし、なんか気が合いそうだし。


「ではパンを買ってくるので、片付けと具材の用意よろしく」


「俺、風呂ー」


「あ、じゃあ俺やります」


「え?!リツ、アオイさんにやらせるつもり!?」


「じゃ、分担で。片付けだけお願いします。準備は俺やります」


「はい、じゃそれぞれヨロシク」



あのパン屋さん開いてるかな?

うーん、いい天気!

ドライブ楽しいかもしれないな。






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