第43話 皇國の刃
現状を悟ったボルゾフは、覚悟を固め勝負に出る。
“長引くほど不利になるな・・・”
場の空気が変わるのを、回りを固める両陣営の兵士達が感じ取った。
「あれは・・・決めに来るな」
ヴォルゲンが呟く。
グレンもその空気を感じ取り、斧を握り直した。
「・・・隊長も決める気だぞ」
「凄いな、お前は・・・その若さで、ここまで練り上げた者は未だかつて居なかった・・・素晴らしいぞ、グレン・バルザード・・・」
「・・・お褒めいただいて光栄ですよ」
「ふっ・・・そんな目付きで、よく言うわ」
ボルゾフが叫ぶ。
「行くぞォ!グレン・バルザードォ!」
グレン目掛けて一直線に駆け出した。
ボルゾフは渾身の力を込め、戦斧でグレンに斬りかかった。
それを、先程と同じようにグレンは、右腕の盾で受け止めた。
違うのは、斬り付けてきた戦斧の柄を右腕で握った事だ。
そのまま力ずくで戦斧を引き剥がす。
「な・・・に・・・?」
あまりの状況に、ボルゾフの脳は理解が追い付いていない。
体格で明らかに劣るグレンが、両腕に全身全霊の力を込めるボルゾフを、片腕で。
異様な光景だ。
そのまま握りつけた戦斧を引くと、ボルゾフの大勢がグレンの側に大きく崩された。
最早ボルゾフには身を護る術はない。
「クソッ・・・」
「これで、終わりだ」
言葉と共に、グレンの斧が振り下ろされた。
そのままグレンの刃が、ボルゾフを右肩から粉砕した。
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