第42話 裏切りの因果

全力で殺し合う皇國軍千人将グレンと、帝国将軍ボルゾフ



徐々に終わりが見えて来たようだ。



現状は、明らかにグレン優勢である。



肩で息をしているボルゾフに対し、グレンはまるで呼吸が乱れていない。



お互いに大きな傷などは負っていないが・・・



“まさか・・・ここまでやるとは・・・”



衰えは、確かに感じていた。



かつて“ガルディア騎士団”在籍時と比べ、前線には全くと断言出来るほど出ていなかった。



“強いな・・・その若さで、本当に・・・”



目の前にいる武将は、恐らく自分の子供よりさらに若いのだろう。



それをここまで、手も足も出ないとは正にこの事だ。



“私が死ねば・・・この城の者は・・・”



彼が死ねば、部下がどのような末路を辿るかは明らかだ。



“ボルド、私は裏切り者だ。家族を殺されたお前知りながら・・・家族を、部下を人質に取られた私は・・・そのまま敵に降ったのだ・・・” 



ボルゾフの脳裏に、過去の悪夢と後悔が過る。



❝だがお前は、軍人として・・・致命的な大怪我を負った状態でもなお、傷ついた部下を、王国の民を逃がすために奮戦したのだ・・・❞



片目を失いながらもなお、矛を振るい❝守るべき者達❞を逃がす、かつてのボルドの勇姿が爛々と目に浮かぶ。



“今では帝国将軍という立場で、皇國大将軍にまで上り詰めたお前と戦う事になろうとは・・・自らの因果とは逃れられないものだな・・・”



目の前に迫るのは、❝皇國大将軍❞ボルド・グラン=ガルヴァローラが必殺の死神として寄越した“戦闘龍”グレン。



“だが・・・このまま素直に殺られてやる訳にはいかんな・・・若武者よ”



弱気になりかけていたボルゾフは、再びグレンを強い眼差しで見据える。



“裏切り者には、裏切り者なりの矜持がある!”



「さあ、行くぞォ!グレン・バルザードォ!」



ボルゾフは全身全霊を込めて、グレンに突進を仕掛けた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る