第38話 開門装置
「隊長・・・俺ら要らなかったんじゃないか?」
そう呟くヴォルゲンの眼前には、夥しい数の敵兵の亡骸が転がされていた。
結局、ヴォルゲン隊はほとんど動かないまま、先鋒の二百人程度で城門守備隊の大多数を片付けてしまったのだ。
「お前が居ると居ないとじゃ、下の安心感が違うからな。お前は居るよ、必要な人間だ。」
愚痴をこぼすヴォルゲンを慰めるグレン。
「そうか・・・」
“それは本来、ガランの役目じゃないのか?”
思うことはあれど、ヴォルゲンはそれを飲み込むことにした。
「ヴィクトル、ブラド隊長はまだ殺り合ってるよな?」
「かなり数が多いですからね、向こうは」
「エリア、開門装置の場所は分かったか?」
「ちょっと手間取りましたけどね、事前情報の話しと違う所にありました。」
「よくやったエリア」
「こちらです、隊長」
「隊長、向こうは助けに行かなくて良いの?」
アイラがブラド隊の方向を指差す。
「あの人には余分な手助けはするなって言われとるからな・・・俺らには、俺らの役割がある」
「そう」
「わざわざ助けにいかんでも、城門さえ開けりゃあ結果は一緒だ」
「隊長、早く」
「ああ」
「この中か?」
グレンはエリアに連れられ、開門装置があると思われる建屋に案内された。
「ずいぶん離れているので、だいぶ泡食いましたよ」
「改造しすぎだろ、クソが」
グレン達は、開門装室と思われる部屋の扉の前に立つ。
「じゃあ、入りますね」
「あぁ・・・」
隊員の問いに、グレンは何か妙な胸騒ぎがした。
「隊長、どうかした?」
アイラが問う。
「おい待て、俺が先に・・・」
グレンが部屋に入ろうとする隊員を制止しようとすると
ドゴンッ!
激しい破壊音が辺りに鳴り響いた。
長槍が扉に深々と突き刺さっている。
あのまま入室しようとしていれば、彼が扉の代わりになっていただろう。
「敵襲!」
ヴォルゲンが叫ぶ。
「どこからだ!」
「上だ!城壁の上に誰か居るぞ!」
「全員、隊長を囲え!」
隊員達がグレンを囲む。
グレンが城壁の上を見上げた。
そこには先程、帝国兵が塞将と呼んでいた大男がこちらを見下ろしていた。
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