冴草ちゃんとキャンプ 1日目昼


「なぁ?冴草ちゃん、これって大丈夫なのか?」

「・・・・・・」

「大丈夫なんだ?」


 今、俺の目の前で繰り広げられている状況の説明をしていこう。


 まずは……



 近くに流れる綺麗な小川だ。

 川幅はそれなりにあり、所々でキャンプ客が釣りをしている。


 うん。釣りをしているのだが……


 ばっしゃーん!!

 ざぶーん!!


「大漁大漁!ほら見て見て冴草ちゃん!今日の晩ごはんよ!」

「・・・・・♪」

「あら?足りないかしら?じゃあもう一回ね!」


 ばっしゃーん!!

 ざぶーん!!


 川に飛び込むちっさいオッサン。

 言わずと知れた乙さんだ。

 ぴっちぴちのブーメランパンツにゴーグルを着けて豪快に潜っていくその姿は正にカッパ。


 ほらほら、子供が見て泣いてるぞ?


 おほほほ、と何故かバタフライで上流へと昇っていく。

 釣りをしている人が、あんぐりと口を開けて見送る。

 誰だよ?アレ連れて来たのは?


「・・・・・・」

「何がオッケーだよ?今のどの辺にオッケーなとこがあるよ?」

「・・・・・・」

「え?魚を配ったら感謝された?あ、そう?」

「・・・・・♪」

「子供は笑い泣きだって?あ、そう?」


 オッケーだな、うん。

 見なかったことにしよう。そうしよう。


 ははは。



 で、次は……


「ミュージックスタート!!」


 ズンズン、と重低音のユーロビートが静かなはずの山間のキャンプ場に鳴り響く。


 綺麗な小川と爽やかな風、緑に包まれた……お立ち台って何だよっ!!おいっ!!


 そこには微妙にリンゴ箱に見えるお立ち台に乗って踊り狂うじゅりあなさんの姿……とその他大勢。


「・・・・・・」

「キャンプ場がディスコになってるぞ?」

「・・・・・・」

「え?お客さんのリクエスト?」


 よく見ると踊っているのは、少し年配の熟女の皆様。

 なるほどなるほど、その世代の人か……ってそんな訳あるかっ!!

 わざわざキャンプ場まで来て踊ってどうするよ?


「・・・・・・」

「だってディスコがもうあんまり無いからって?」

「・・・・・・」

「そりゃ息抜きも必要だろうけど」

「・・・・・♪」

「楽しそうだからいいって、うーん、何か違う気がするけど……まぁいいか」


 って言うかさ、何でみんなボディコンを着てるんだ?そのふわっふわの扇子は自前なのか?


「ドリンクでございます、本多様」

「あ、サンキュー」


 ドリンクもいつも通り、安定のお茶なんだな……


 踊る熟女にオッサンと子供達が歓声を上げてるのだが……うん、見なかったことにしよう。



 最後に……


 少し離れた広場で対峙する2つの影。


 かたや筋骨隆々のゴリラ、かたや茶色の毛並みがとても綺麗な……クマ!?


「うおぅいっ!!何やってんだ?ゴリラぁぁ!」

「・・・・・・」

「がっぷりよっつに組あった?クマと!?」

「・・・・・・」

「クマが大外刈りだと!?」

「・・・・・♪」

「躱して寝技に持ち込んだっ!?」


 大歓声の中、クマがぱんぱんとタップをする。


 ……一本勝ち?


 横四方固め?知らねえよっ!


 ゴリラとクマが抱き合ってお互いの健闘を称えあってるぞ。

 クマ……それでいいのか?

 それと側でハンカチを目にあてて涙を拭いている頼子さん、あんた……そっち側の人だったのか。

 普通の人だと思ってたのに……


「・・・・・・」

「キャンプって楽しいねって?」


 どこのキャンプに川で滝登りしてユーロビートで踊ってクマと戦うやつがいるんだよ?

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