トースターを修理しよう
「・・・・・?」
ち〜ん!
「・・・・・?」
毎日の日課であるトースター勝負なのだか、どうもトースターの調子が良くない。
いつもなら天まで届けとばかりに飛び出すトーストが出てこない。
彼女はそんなトースターを不思議そうに小首を傾げて眺めている。
「壊れたんじゃないか?まぁ元々が壊れてるみたいだったけど」
ええっ?って顔をして振り返る冴草ちゃん。
いやいや、普通わかるって。
渋々とトースターに詰まったトーストを取り出して俺に差し出す。
「ジャム?バター?ああ、どっちもね」
彼女からトーストを受け取りバターを塗って上からジャムを塗ってあげる。
トボトボと俺の膝に座ってトーストを可愛く両手で持ってかじりつく。
「乙さんのとこに持っていくか?直してくれるかもしれないし」
「・・・・・♪」
嬉しそうに俺を見上げる彼女。
って、何でもう顔中がジャムだらけなんだよ?
ベタベタになった彼女の顔を拭いてあげてから乙さんのアンティークショップ「ハンプティ」に行く用意をする。
今日の彼女の格好はメイド服だ。それも珍しくミニスカではなくロングスカートのオールドタイプ。
「・・・・・♪」
ご機嫌に俺にぶら下がって乙さんのアンティークショップに向かう。
カランカラン
とドアの鐘を鳴らして店内へ。
「乙さん?いるか〜?」
「あら?いらっしゃい。今日も可愛いわね〜」
棚の向こうからダンディなヒゲの小さいオッさんが顔を出す。
「ちょっと見てほしいんだよ、トースターが壊れたみたいでな」
「ふ〜ん、ちょっと貸してごらんなさい」
乙さんは、俺からトースターを受け取るとテーブルの上に置いてドライバーやらなんやらで器用に分解し始めた。
「・・・・・?」
「ちょっと待っててね〜」
「・・・・・・」
「うん?大丈夫よ、ちゃんと直してあげるから」
「・・・・・♪」
いつも通りのエスパー同士の会話は無視して店内を物色する。
俺としては新しいティーポットが欲しいんだよな。
「ティーポットならそっちの棚にあるわよ」
「何で俺の考えてることがわかるんだよ?」
「え?それはね・・・内緒」
乙さんは、ウフフと笑いウインクして再び修理に戻る。
ハート型のウインクを叩き落として俺は棚からティーポットを取り出してみる。
「うん、中々いいな」
流石は乙さんだけあってよく俺の好みを理解している。
綺麗なレリーフが施されたウェジウッドのジャスパーのティーポット。国内ではあまりメジャーではないジャスパーだが、俺は気に入っている。
「うん、これで直ったと思うわよ」
乙さんがそう言って彼女にトースターを渡している。
「・・・・・?」
「ふふふ、ちゃあんと飛び出すわよ」
「・・・・・♪」
そこは普通に直せよな?
ティーポットとトースターの修理費を払って店を出る。
「・・・・・♪」
「うん、良かったな」
「・・・・・♪」
「は?帰ってから朝の続きするのか?」
満面の笑みで頷く彼女を渋々抱き抱えて俺は我が家に向かって歩いていく。
まぁいいか。毎日の日課だしな。
俺はリビングのホワイトボードを思い出して少しだけ苦笑した。
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