古時計がやってきた



「よしっと、お〜い、冴草ちゃん。出かけるぞ」


俺は、出かける用意をして彼女に呼びかける。


「・・・・・・」

ガチャ


とてとて


ガチャン


おいっ!まだ全裸か!


待つこと10分、赤×黒のゴスロリを着た彼女が部屋から出てくる。

おぅ!今日も安定の可愛さだな。


「さて、なら時計を取りに行くか。ゴリラに軽トラも借りたしこないだみたいに背負って歩くのはごめんだからな」


ハンプティから時計屋まで100㎏はある時計を背負って歩いたんだぞ、なんの罰ゲームだよ?


「・・・・・・」


いやいや、そんな期待のこもった目で見てもダメだからな?

俺は、彼女を小脇に抱えて軽トラの助手席に放り込む。


「はい、出発〜」

助手席で不満そうに膨れている彼女を撫でつつ俺は、時計屋に向かって出発した。



「到着〜だ」

車で20分程で時計屋に到着する。この辺りでは有名な店で、どんな古い時計でもまず間違いなく修理してくれる。


「お〜い、ロンさん!いるか〜」

俺は時計だらけの店内に入って店主のロンさんに呼びかける。


「ほほう、ポンさんじゃないアルか?時計取りに来たアルね?」

「ああ、修理出来たんだだろ?」

「完璧アルよ、ワタシに直せない時計ないアルね」


時計屋『針理堂』店主のロンさん。

某キン◯マンのラーメ◯マンを思い浮かべてもらえればわかるだろう。

中国人だと言い張る歴とした関西人だ。


「おや?いつものお嬢さんはいないアルか?」

「冴草ちゃんか?冴草ちゃんならほら、あそこに」


俺が指したところでは冴草ちゃんが時計が並ぶショーケースに張り付いていた。


「なにか気になった時計があったアルね?」

「みたいだな。それはそうと時計を見してくれよ」

「おお、そうだったアル。こっちアルね」


俺とロンさんは、店の隣の作業場兼倉庫に向かう。


「中々に手こずったアルよ。何分部品を交換するにも部品がもう作られてなかったアルから、自分で作ったアルよ」

「そりゃすまなかったな」


「この部分アル」

そう言ってロンさんは振り子の付け根部分の発条を指した。

「ここが壊れてたから振り子がちゃんと動かなかったアルよ、バッチリ整備したから完璧アルよ」


流石はロンさん。ラーメンマ◯みたいだけど出来る男だ。


「じゃあ俺はとりあえず車に積んでくるから冴草ちゃんの相手しといてくれ」

「わかったアルよ、お嬢さんの相手するのは楽しいアルから」


そういえばこの人もエスパーだったっけ。

なんでみんな冴草ちゃんの言いたいことがわかるんだ?


冴草ちゃんは、この日は結局時計は買わなかった。

何やら考えこんでいたので多分予算オーバーだったんだろう。


こうして我が家に、巨大な古時計がやってきた。




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